(文:コーチ・エィ 稲川由太郎)
「同じフロアで働く人、特に席が近ければ近いほど、メールやSNSなどさまざまな方法でコミュニケーションをとっている」という研究結果があるそうです*1。
これを知ったとき、私は少し意外な印象を持ちました。なぜなら、メールやSNSは日常的では顔を合わさない人との連絡手段だと思っていたからです。
ただ、たしかに、席が近くなると親近感がわき、コミュニケーションがとりやすくなり、メールの数も心なしか多くなるような気もします。
なぜ、「席替え」は一大イベントだったのか?
マサチューセッツ工科大学教授のトーマス・アレンは、1970年代に、「物理的な距離とコミュニケーションの頻度には強力な負の相関的な関係がある」ことを証明しました。この法則は「アレン曲線」と名づけられています。
「アレン曲線」では、席の近い同僚とは、4倍も多くコミュニケーションをとっているそうです(約1.8メートルと約18メートルの距離にある人を比較した実験)。そして、距離が離れてフロアや建物が別になると、連絡を取り合わなくなるというのです*2。
子どもの頃、学校でのイベントのひとつであった「席替え」を覚えているでしょうか。
気になる子の近くの席を取り合った経験がある方も少なくないと思います。これも、席が近くなれば他の誰よりもたくさん話せて仲良くなれるだろう、という淡い期待と無意識からの行動だったのかもしれません。
最近は、フリーアドレスで席を自由に選べる企業が多くなりました。しかし、そうした企業の方に聞くと、空いている席を「あの人がいつも座っているから」と避けたり、顔見知りの人の近くを選んだり、毎日同じ席に座ったりする人が多いのも実状のようです。