「規制が厳しすぎて事業継続が困難」

 2017年12月、JETRO(日本貿易振興機構)上海事務所は、中国に進出している日系企業を対象にした「環境規制調査アンケート」を公表した。これによると、対象企業190社のうち4割近くが「当局の指導を受けた」とし、中には「規制が厳しすぎて事業継続が困難」とする回答もあった。

 同資料によれば、江蘇省昆山市は化学企業を移転・廃業させ、将来的に半減させる方向である。またエリアによっては、汚染排出枠の不足を理由に新規工場の建設を拒否するケースも頻発しているという。

 杉田さんは2018年8月に華南地区で提携工場の操業を開始したところ、環境査察が入り、あっという間に閉鎖に追い込まれたという。

 中国政府は、経済の「新常態(ニューノーマル)」として、「質を重視した成長」を打ち出している。この構造転換によって、あらゆる製造業企業は環境対策に十分なコストをかけることを求められるようになった。

 人件費の高騰、そして環境規制強化と、中国に進出した企業の負担は重くなるばかりだ。数年前、一部の日系企業は見切りをつけて撤退したが、今、中国の中小工場に迫るのは「追い出し」にも近い閉鎖・撤退の圧力だ。

 いよいよ日本の製造業の本格的な「中国撤退」カウントダウンが始まったのだろうか。蘇州で20年間奮闘した杉田さんは「工場をさらに奥地に移転させるつもりだ」と徹底抗戦の構えだ。中国沿海部に無数に散らばる日系の中小工場も、“時間との闘い”を覚悟するときが来たようだ。