「操業環境はますますひどくなるばかりです」
20年前、工場の労働者は農村の出身者が大半を占め、600元程度の月給でも集まってきた。しかし、今では4000元を出しても働き手は見つからない。
また、当局の規制も厳しくなった。「蘇州市内で新たに自動車部品の工場を建設しようとしましたが、当局からの認可は下りませんでした。足元にはこんなに空き地が広がっているのにもかかわらず、です」。
蘇州では日系企業を含めて外資系工場の撤退が続いており、工業団地では空き地が目立つようになった。杉田さんは「スカスカな状態」だと表現する。
蘇州市の呉江区政府関係者によれば、「新たな工場の建設は認めず、淘汰させる方向だ」という。杉田さんは、方針の背景にあるものは「環境対策」だという。ハイエンドの工場は残すという政策もあるようだが、環境対策の一環として基本的に工場の新設を認可しなくなった、ということだ。中国の中小企業の工場は環境対策をおろそかにするところが少なくない。杉田さんは、「地方政府は外資、内資にかかわらず、中小企業を倒産に追い込んでいるフシすら感じます」(同)と、ため息をもらす。
ゴミ処理場の建設に反対する住民たち
蘇州市が工場を淘汰しようと目論む背景に環境規制の強化があることは間違いない。
2015年に中国政府が環境保護法を改正して以降、規制は年々強化されている。2016年には中国環境保護部が地方都市で環境査察を行い、日系企業でさえも「差し押さえ、生産停止、身柄拘束」など処罰の対象となった