北アフリカに世界の注目が集まっている。これまであまり関心の寄せられることがなかったアフリカ最北端の国チュニジアでの民主化要求デモが、ベン・アリー長期独裁政権をあっさり崩壊に導いてしまったからである。
世界中を驚かせたエジプトへの飛び火
そんな誰もが予想だにしなかった事態に驚いている間もなく、より国際政治的に重要な地位にあるエジプトへと反政府運動が拡大していったことは、さらに世界中の人々を驚かせた。
エジプト同様、観光業が命綱のチュニジア。治安も良く、気軽に行けるアラブ、そしてアフリカとして人気のこの地には、日本からも10日間程度のパッケージツアーがよく出ている。
シチリア島とは目と鼻の先だから、感覚的にはアフリカというより地中海の国と言えるかもしれない。首都チュニス近郊には格安ツアー向けのホテルも乱立し、アラビア語ができなくとも、フランス語なら楽々通じるから安心でもある。
旧宗主国フランスやイタリアの人々にとって、我々日本人がグアムに行くような感覚で訪れる異国情緒あふれる地なのである。
アラブ世界ではダントツで西欧型近代化が進み、インフラ整備が行き届いているチュニス周辺では鉄道網も整備され、近郊にある観光の目玉、カルタゴ遺跡へ行くにも、20分ほど乗車して「カルタージュ(カルタゴ)・ハンニバル駅」で降りればいい。
古代への思いが台無しになる警備員
現代的な建物と遺跡が混在するその街の、地中海の陽光に照らされた遺跡に降り立てば、古代人の生活の息吹きを存分に感じられるはずだ。
しかし、観光の際、1つだけ気をつけなければならないことがある。いや、今や「あった」と言うべきなのかもしれない。
というのも、カルタゴ遺跡に隣接して大統領官邸があるため、遺跡からその方向に向けての写真撮影が禁止されているのである。
警備員が周りを固めている姿を見ると、現実に引き戻されてしまい、古代への思いも台無しとなってしまうのが残念でならない。