課題山積の日本の将来像をめぐり多面的な討議が行われたエコノミスト・カンファレンス「ジャパン・サミット2010――日本における世代シフト、新たな時代のリーダーと変革のビジョン」。最終回となるダイジェスト第7回は「ジャパン・インサイト:“外”からみた日本」。
パネリストはマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長のエアン・ショー氏、欧州ビジネス協会会長(イケア・ジャパン前社長)のトミー・クルバーグ氏、エコノミスト誌東京特派員ケネス・クキエ氏。司会はエコノミスト・インテリジェンス・ユニット シニア・エディターのデビッド・ライン氏。
日本企業は、もっと外の世界にオープンになれ
ライン 日本はユニークな国です。携帯電話はガラパゴス化しているとか、文化的にもユニークであると言われています。
しかし単にユニークと言っているだけでは、問題は解決できません。明治維新であれ、第2次世界大戦後の高度成長期であれ、日本は海外から学ぶことによって経済的な発展を遂げました。
日本が停滞期から脱するためには、日本のビジネス風土や企業の社風を革新しなければなりません。内部からの改革ができないのであれば、海外の成功事例に虚心坦懐に学ぶべきなのではないでしょうか。
ショー 日本の企業文化についてお話ししますが、日本に単一の企業文化があるわけではありません。トヨタ自動車、ホンダ、資生堂、コマツ、ソフトバンク、ユニクロなどが勝利の方程式を実現している一方、防戦一方で勝てない企業文化の企業もあります。
大切なことは、もっとパフォーマンスを重視すべきだということです。ただ単に利益や規模の拡大を追求するということではありません。パフォーマンス=利益ということでは決してないと思います。
パフォーマンスとは何かというと、より高いターゲットを設定してそれを達成するということです。いったん掲げた目標を達成できないからといって、下方修正していいということは決してありません。
次に、外の世界に対してオープンにしていくことが重要です。例えば米アップル社は、他の企業との提携によって成長してきました。
日本の企業の多くは「品質保証ができない」とか「品質管理が難しくなるから」という理由で、パートナーシップを好みません。しかし今の世の中、よりオープンにならなければならないと思います。
さらに、異なるマーケットについてもオープンにならなければなりません。日本のエレクトロニクス関連企業は「我々はプレミアムな製品を作っている企業だ」という思いでいると思います。
しかし、同じセクターのインド企業は、日本製品よりもずっと安価なものを製造しています。日本の企業は世界の消費者の心理をより深く読み、特にエマージングマーケットについて、より掘り下げて理解していく必要があると思います。
労働市場も、もっと柔軟性のあるものに変えていかなければなりません。これまで、日本に定着している終身雇用制度は、従業員の忠誠心を養うという意味では効果的でした。
これからは、いろいろなバックグラウンドを持つ転職者の採用を日本の企業に勧めたいと思います。それは社内の活性化にもつながると思います。
さらに、日本のトップマネジメントにはインパクトが必要です。企業のトップは、果敢に新しい方向を決めて、それに邁進することが必要なのです。社内にある官僚主義を打破しなければならないと思います。
最後に、企業のトップは適材適所の人事をもっと意識しなければなりせん。もちろん、日本の企業の中では人事ローテーションも重要なのですが、パフォーマンスを重視した人の配置が必要だと思います。こうした改革によって、日本の企業は勝ち続けていくことができると思います。