役者・ファン不在の企業は・・・淘汰・再編も

【図解】トヨタが新車販売世界一

悲願の「世界一」だが・・・〔AFPBB News〕

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 奥田碩氏(相談役)、張富士夫氏(会長)、渡辺捷昭氏(社長)――。創業家以外のこの3人が社長を務めてきたこの15年弱の間に、トヨタは大きな飛躍を遂げた。途方もない世界での自動車販売台数だけでなく、ライバルに先んじて1997年投入したハイブリッド車「プリウス」が成功を収め、環境に強い先進企業というイメージでも他を圧倒するようになった。

 その基礎をつくったのが奥田氏。張、渡辺両氏はその流れをより大きく、太く、そして確かなものにしていった。右肩上がりの需要拡大が続く中、それはついこの間まで永遠に続くかのような錯覚さえ抱かせた。

 そして今・・・。全世界で自動車が売れない状況に陥っている。

トヨタ、新型プリウスを発表 北米国際自動車ショー

今年投入、3代目プリウス〔AFPBB News

 今や、トヨタの代表車「プリウス」に関しても、投入前は社内に慎重意見が多かったと聞く。「そんな儲からないクルマを出してどうするのか」――。そうした声を抑え込み、将来の成長性を見込んで決断したのが奥田氏だった。

 章男次期社長は、同じように先を見越した決断ができるのか。逆風が吹き荒れる中、14年ぶりの創業家トップに求められるのは、腹の据わった行動であろう。急速に進む若者のクルマ離れや、円高による大幅な利益目減りへの対応、有望産業に間違いない環境・エネルギーへの取り組み、場合によっては買収を仕掛けるような大胆さがあっていい。

 今回の人事の陰には奥田、張両氏ら重鎮の動きがあったとされる。主役の張れる人気の若手俳優(章男氏)がいて、脇を固める名優(奥田、張氏ら)が健在。それに、熱烈なファン(系列の部品・販売会社)がいる。トヨタの強さの源泉を改めて目の当たりにしたような気がした。

 一方、トヨタのような役者もいなければ、支えてくれるファンもいない、大半の日本企業はこの難局をどう乗り切ろうというのだろうか。トヨタさえ苦悩する時代。それは、再編・淘汰が本格化する時代の幕開けを意味する。向こう1~2年で単独では生き残れず、他社の軍門に下る決断をする企業が、多数出てくるのではなかろうか。あとはタイミングの問題である。

トヨタ、下期は1000億円規模の営業赤字に

「名古屋不況」、回復はいつ?〔AFPBB News

 日本企業がそれほど厳しい状況にあることは忘れたわけではあるまいが、政府・与党の景気回復に向けた取り組みは鈍い。2兆円の定額給付金を盛り込んだ2008年度第2次補正予算は、1月27日にようやく成立した。「1次補正」「2次補正」「2009年度予算案」を3段ロケットとして、切れ目なく景気対策を進めていくと麻生太郎首相は28日の施政方針演説でも強調していたが、実際にはスピード感に乏しく、何やら心もとない。

 1月30日付の日本経済新聞や読売新聞は、トヨタが今期業績予想を再度下方修正し、営業赤字は4000億円規模に拡大する見通しだと報じた。時機を逸した景気対策のツケを日本企業が被り、日を追うごとにそれが大きくなっているとすれば、毎度のことながら無念である。