旧ソ連のモルドヴァが2016年の大統領交代以降、路線対立で揺れ動いている。クレムリン好みの政策を実現しようとする大統領と、親欧路線を掲げる議会多数派・内閣との関係が悪化し続けている。
2016年12月にモルドヴァ大統領に就任したイーゴル・ドドン氏は、欧州連合(EU)に対し連合協定(DCFTA)から片務的な自主的貿易特恵制度(ATP)への格下げを求め、その一方でロシアを中心としたユーラシア経済共同体への加盟意欲を示している。
また、北大西洋条約機構(NATO)については、モルドヴァ憲法が軍事的中立を謳っていることを根拠に、米国主催の国際軍事演習へのモルドヴァ部隊の参加を阻止すべく国防相と対立したり、駐モルドヴァNATO連絡事務所の開設に異議を唱えたり(結局12月に開設)、と歴代政権が着々と築き上げてきた親欧政策の成果をひっくり返そうとしているのだ。
親欧内閣も負けてはいない。
大統領を差し置いて国連総会に出席した首相はモルドヴァの被占領地域(沿ドニエストル)に駐留するロシア軍の撤退を求める演説を行った。
ドドン大統領が懇意にしているラゴージン・ロシア副首相を入国禁止とし、さらには親欧派政治家がモスクワで拘束されたことに抗議して駐ロシア大使を召還するなど、反ロ姿勢を先鋭化させている。
真の「親ロ派」ドドン大統領
ルカシェンコ・ベラルーシ大統領やヤヌコヴィッチ前ウクライナ大統領のように旧ソ連諸国には「親ロ派」を冠される政治家が数多く存在する。
しかし、石油・ガスをめぐって毎年のようにクレムリンと対立するルカシェンコ氏や、土壇場までEUとの連合協定の調印を目指していたヤヌコヴィッチ氏と比べると、ドドン大統領の「親ロ」ぶりは際立っている。
彼は選挙で公約した「親ロ的」政策、すなわち「ユーラシア経済共同体(EAEC)加盟」、「軍事的中立の堅持」、「モルドヴァ連邦化」をことごとく実行に移そうとしているのだ。
こうしたドドン大統領の政策は、クレムリンと一致している。