この話を聞いて私はぞっとした。儲かっている自分の会社を売ってしまうほどに、AIなどの台頭による今後の環境の変化を脅威に感じている経営者が増えているのだ。
少子高齢化が進む日本では今後、労働人口が不足する可能性が高いため、その不足をAIや機械を活用して補っていく必要があるが、その労働人口不足を補う以上のスピードでAIや機械の発達は進んでいくだろう。
そして、これからの時代は多くの分野で人間の仕事がAIや機械に取って替われていく。近年では、スイスやハワイなど、すべての国民に対して生活に最低限必要な所得を無条件に給付するベーシックインカムの導入を検討している例が出てきている。
ベーシックインカムは楽園を実現させるか
フィンランドでは実験的に導入を始めており、日本では先の衆議院選挙においてはベーシックインカムの検討を政策として掲げている党もあった。
財源の問題から実現可能か分からないが、仮にベーシックインカムが導入されれば国民は仕事をしなくても生活していけるだけの収入が確保でき、仕事はAIや機械がすべてやってくれるようになる。
もしそうなれば人間は仕事から解放され、楽園のような時代が来る。そんな見方もある。
ただ、これはある意味、地獄の始まりとなるかもしれないと私は感じている。仕事は収入を得るということ以外にも多くの意義を持っている。例えば、
(1)人から感謝され自分を受け入れる機会を得られる。
(2)心身を健全に保つ。
(3)責任をもたらすことで人を成長させる。
(4)社会との接点をもたらす。
といったことが挙げられる。人間は、人から感謝されたり、何らかの形で人や組織、社会の役に立てていると実感できたりすることで、自らの存在価値を見出し、自らを受け入れることができるといった基本的な性質を持つ。
書籍「嫌われる勇気」(ダイヤモンド社)で一躍有名になった心理学者のアルフレッド・アドラーは、自分を受け入れること、他者を信頼すること、他者に貢献することは相互に影響し合っていると言っている。