衆議院予算委員会で、野党の質問時間が削減されることになった。予算委の持ち時間はこれまで「与党2対野党8」だったが、総選挙の結果を受けて自民党が「5対5」にせよと要求し、それに野党が抵抗した結果、与党5時間、野党9時間で「与党36%」になった。与野党の数字を「足して2で割った」わけだ。
これは森友学園・加計学園のようなスキャンダルを野党が騒ぎ続けることに対する自民党の対抗措置だろうが、この背景にはもっと深刻な問題がある。政府が国会に法案を出したあとは修正されないので、国会は立法府として機能していない。与野党の時間配分をどう変えても、空洞化する国会は変わらないのだ。
GHQのつくった「ガラパゴス国会」
国会に提出される法案の8割以上は内閣提出法案だが、これは憲法違反の疑いがある。憲法41条では「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」と定めているので、厳密に解釈すると内閣が法案を提出することはできない。
日本では便宜的に国会が法案を「承認」することを「立法」と解釈しているが、これは憲法解釈として疑問がある。憲法に同様の規定があるアメリカでは、政府(ホワイトハウス)が法案を提出することはできない。
1946年にGHQ(連合国軍総司令部)がつくった憲法草案でも、国会はきわめて強い権限をもっていた。国務大臣の任命にも国会の同意が必要で、最高裁判決も国会議員の3分の2の同意があれば破棄できることになっていた。これらの規定は日本政府の修正で削除されたが、国会優位の慣例は残った。
閣僚は答弁がなくても国会に1日中しばりつけられて「ひな壇」に座り、国際会議にも出られない。このため、国会以外のスケジュールが異常に過密で、首相は会議や面会も15分ぐらいしかない。官僚の時間も大部分が、国会の答弁づくりや待機といった非生産的な業務に費やされる。
これは世界に類を見ないガラパゴス国会で、議院内閣制とも違う。イギリスでは首相が議会に出てくるのは党首討論のときだけで、閣僚も担当する法案が審議されているときしか議会には出てこない。ところが日本では閣僚が国会にずっと拘束されているため、日常業務は事務次官が仕切り、閣議はそれに「花押」を推すだけのサイン会である。