総選挙は結果的には野党が分裂し、自公政権はほぼ現状維持になりそうだが、マクロ経済指標でみると安倍政権の実績は芳しくない。政権の始まった2013年から今年前半までの実質成長率は年平均1%程度で、民主党政権より低い。物価も、インフレ目標を6回も延期したが達成は見通せない。
ところが雇用だけは好調だ。完全失業率は3%を切り、有効求人倍率は40年ぶりに1.5倍を超えた。このため自民党は選挙でもっぱら「雇用が改善した」というが、「デフレ脱却」はできていないのだから、これはアベノミクスのおかげではない。雇用は民主党政権の時代から一貫して改善している。労働市場に構造的な変化が起こっているからだ。
日本的な「雇用なき景気回復」
まず数字を確認しておこう。図1は厚生労働省の統計だが、完全失業率は2002年から下がり始め、「リーマンショック」後の2008~2009年に一時的に上がったあと、2010年からまた単調に下がっている。有効求人倍率はその逆に、2007~2009年を除いて上がり続けている。これは循環的な回復で、アベノミクスの始まった2013年以降も変化は見られない。
雇用が改善している最大の原因は、2000年代以降の非正社員の増加である。その比率は37.5%。失業率や求人倍率は人数の統計だから、8時間働く正社員が3時間働くパート2人に代替されると改善する。景気回復局面で主婦と退職した高齢者の労働参加率が上がったので、人数でみると雇用は改善したが、総労働時間はやや減った。