世界55ヵ国、200カ所に拠点をもつ大手コンサルティング企業アクセンチュア。長時間労働の代表格とも言える外資系コンサルでありながら、いち早く働き方改革に取り組んでいるのだという。
「Project PRIDE」と名付けられたアクセンチュア流 働き方改革の真の狙いとは? 同社 執行役員 人事部長 武井 章敏氏と人事部 マネジャー 岩下 千草氏に、話を聞いた。
経営改革としての「Project PRIDE」が必要だった理由
アクセンチュアでは、政府主導の働き方改革実現会議発足に先駆け、2015年1月より「Project PRIDE」をスタートさせている。現 代表取締役社長の江川 昌史氏が「アクセンチュアさん、採用関係では、ものすごく評判悪いですよ」という人材紹介会社の言葉を耳にしたのがきっかけだった。
かつてアクセンチュアのビジネスモデルは、「コンサルティング」「SI(システム構築)」「アウトソーシング」の3つの領域を主軸にしていたが、近年、「デジタル」をはじめとする新たな領域がどんどん加わるようになった。デジタルを得意とする女性や外国籍の多様な人材を採用し、これまでのトラディショナルなコンサルティングやシステム構築のビジネスから、デジタルを主体としたビジネスに移行していく必要性に迫られていた。
なぜアクセンチュアが採用市場で評判が悪かったのか。江川氏の著書『アクセンチュア流生産性を高める「働き方改革」』(日本実業出版社)の中から、改革前の社員の声について一例を挙げてみよう。
・遅くまで働いて、”頑張り感”を出す人が多い
・夜中に送られてきたメールに即返信できることが尊ばれる
・挨拶しない人が多い
・外資系コンサルタントは偉いと思っている節がある
・ロジカルシンキング至上主義で、右脳的な発想の人に対するリスペクトがない
このように、長時間労働を美徳とする体育会系のカルチャーが浮き彫りとなり、精神的なストレスによって余裕がなくなり、モラルやビジネスマナーにも悪影響が出ているという内実が明らかとなったのだ。
アクセンチュアは人材がすべての会社であるにもかかわらず、社員が疲弊している。採用もままならない。慢性的な人材不足は、さらなる過重労働を招くことにもなりかねない。まさに負のループである。カルチャーを変え、ダイバーシティを進めることで、魅力的な環境を作り上げなければ、明るい未来を切り開けないと江川氏は確信した。
「Project PRIDE」は単なる働き方改革ではなく、経営改革そのものだったのである。