皆さんは「べろあい」という言葉をお聞きになったことがあるだろうか?

 一部詳しい方には極めて身近な「べろあい」だが、大半の読者には目新しいのではないかと思う。「べろあい」を巡る思いがけない物語をご紹介したい。

高貴とされた鉱物顔料

聖徳太子(ウィキペディア

 話が突然飛ぶようだが、日本古代の文化を思い出して頂きたい。聖徳太子が「十七条憲法」などと並行して定めたとされる制度に「冠位十二階」というものがあった。

 これは日本に公式に導入された、たぶん始めての体系だった官僚機構と言えるだろう。

 宮廷に務める官僚、つまり公務員のランクを12階級に分類する、中国・朝鮮半島の制度を参考に移入されたものである。

 「冠位十二階」は小学校高学年の社会の教科書にも登場すると思うが、この12ランクが色彩で区別されていたことは、あまり強調されていないかもしれない。

 宮廷での冠など着衣の色が身分によって定められていたのである。

 紫を最も高位として青、赤、緑、白、黒という6色を「上下」に分けて12階級としている。 

 物理に照らして考えれば、この中で紫や青は赤よりも光子として持つエネルギーが高い。虹の7色を考えれば分かりやすいだろう。

 紫外線の一種であるX線は高エネルギーで私たちの体を透過して体内の写真撮影が可能だし、赤外線はエネルギーが低く熱線として「赤外線こたつ」などにも利用される。

 古代中国や古代日本で紫や青が赤や緑より高位とされたのは単なる偶然かもしれない。実際、虹の7色は「赤橙黄緑青藍紫」の順でエネルギーが上がっていくけれど、冠位十二階では赤と緑が逆転している。だがこんな風に考えてみるとなかなか興味深い気がする。

 あるいは、冶金などの技術に長けた古代中国人は、より高度な技術でより高温に熱した時に発せられる光から、青や紫を尊い色と見なしたのかもしれない。歴史の真実は分からないが、こうした想像をたくましくするのはなかなか楽しいものである。