トランプ政権発足2か月、障害相次ぎ公約達成に遅れ

メキシコとの国境に壁を築く計画の大統領令に署名するトランプ氏(2017年1月25日撮影)。(c)AFP/NICHOLAS KAMM〔AFPBB News

 アメリカの共和党が提案した「国境調整税」が話題を呼んでいる。トランプ大統領の「メキシコに35%の関税をかける」といった保護主義と混同されがちだが、これは彼の当選する前の昨年夏に共和党主流派が出した、包括的な税制改革案である。その狙いは貿易赤字を減らすことではなく、法人税をなくすことだ。

 この提案に対して、アメリカの小売り業者は「輸入品が大幅に値上がりする」と反対運動を展開しているため、実現するかどうかは不透明だが、この改革案はきわめて合理的である。

 その目的は輸出を増やすことではなく、グローバル資本主義の流れを変えることで、実現したら、そのインパクトは革命的といってもよい。

法人税を廃止して課税をキャッシュフローに一元化

 国境調整税という名前は誤解を招くが、正式名称は「目的地キャッシュフロー税」(Destination-Based Cash Flow Tax)という。難しそうだが、その中身はシンプルだ。具体的には、次の3つがポイントである。

1. 利益に課税する法人税を廃止し、キャッシュフローに20%課税する

2.商品が消費された場所で課税し、海外の売り上げには課税しない

3.輸入品にも同じ税率をかけ、輸出品にかけた税は輸出のとき払い戻す

 この税金の本質は(国内も海外も同じく)会計上の利益ではなくキャッシュフローに課税する点にあるので、この記事では「キャッシュフロー税」と呼ぶ。今の法人税は複雑で抜け穴が多い。日本の法人の7割が赤字で、税金を払っていない原因は、法人税が帳簿上の利益に課税されるからだ。

 会計上の利益は、償却の期間を変えると大きく変わる。特にややこしいのは減価償却である。租税特別措置も償却期間の変更で行われることが多いので、税務当局の裁量が大きい。

 共和党の改革案では利益に課税する制度をやめ、正味のキャッシュフローに20%課税する。売り上げから仕入れや人件費などの経費を差し引いて課税するが、減価償却も金利も経費として認めない。租税特別措置もほとんどなくなり、税制は劇的に簡素化される。