【連載第6回】
鞄や家具などのものづくり、ファッションやオペラなどの文化。歴史的建造物が連なる町並みや穏やかな農村。国のいたるところに文化と産業が息づく町があるイタリア。国家財政・社会情勢が悪化する中、なぜイタリアの地方都市は活気に満ちているのか。イタリアに日本の課題「地方創生」解決のヒントを探る。
(前回の記事「イタリアの地方産業が強い理由。産業別クラスターとコーディネーターという仕組み」はこちら
毛織物の町に渦巻く「Made in Italy by Chinese」の憂鬱
カルピのように、ニットの縫製工程を中国人経営の企業が担うという現象は、他の町でも起きています。
トスカーナ州のプラートは、毛織物の産地として栄えてきた町ですが、近年は中国企業の流入による複雑な問題を抱えています。
イタリアに限らずどこの国においても、労働集約型の縫製工程などは国外にシフトしていき、最終的には中国に行き着きます。
ところが、中国で作られるようになると、原産地の財産であるデザイン等もすべて中国に持っていかれてしまいます。これは産業の死活問題ですから、イタリアは中国に流れることを食い止めてきたのです。
ところが、拒否を続けていたら反対に、中国から人馬一体でイタリアにやって来てしまいました。そして、町外れに中国人が経営する縫製会社が続々とできていきました。
彼らは使いやすい中国人を雇って、ブラック企業さながらに働かせます。もちろん不法滞在者も大勢います。地元住民とは交わらないので実態は不明ですが、縫製をポンと頼めば、ポンとできあがってくる。