バンダービルト大学のピーボディ図書館(ウィキペディアより)

 次期駐日大使に指名されたウィリアム・ハガティ氏(57:以下ハガティ)とはいったいどういう人物なのか。

 日本のメディアで詳述している報道はあまり見かけない。次期大使に指名されたと報道されたのが1月4日で、事実関係と略歴が紹介されたに過ぎない。

 周辺を取材すると、人物像が少しずつ見えてきた。一言で述べると「オールラウンド・プレーヤー」。財界と政界を行ききしながら、金融、ヘルスケア、IT、消費材といった多業種に携わってきた人物だ。

 ビジネスマンと公務員の両方を経験しているため、実務的な大使になるとの見方もある。しかし多くのことを要領よくこなすあまり、日和見的な性向がうかがえもする。

南部テネシー州出身、ボスコン勤務

 まず経歴から眺めていきたい。

 南部テネシー州出身のハガティは同州のバンダービルト大学経済学部を卒業後、法律大学院に進学。同大学は全米でも難関大学の1つで、「南部のハーバード」とも言われている。

 卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、コンサルタントとして世界5大陸を飛び歩いた。同社を辞める前の3年間、東京に勤務していた経験がある。そのため日本の主要メディアは「知日派」と書いた。

 だが30年ほど前のことであり、以後日本との関係や知識の深度は定かではない。それでも、ドナルド・トランプ次期大統領(以下トランプ)がハガティを指名した理由の1つは、3年間の滞日経験だったことは容易に想像がつく。

 人物評は、トランプの対局に位置するほどバランス感覚が良好との見方が大勢を占める。政界、財界の両方に広い人脈があり、統率力と事務能力に長けた人物との評価である。トランプのように将来は大統領を狙うという野心家ではない。

 むしろ4人の子供がいる家族を大切にし、地元テネシー州に活動の基盤を置きながら、地域のためにボランティアで汗を流す良心的な保守派男性という像が浮かび上がる。

 気になるのは日和見的な性向だ。完璧な人はいないが、ハガティの世渡りを見ていると「したたか」という言葉が出てくる。