【連載第5回】今、日本の農業は変わらなければならない。食料安保、食料自給率、農業保護などにおける農業政策の歪みにより日本農業は脆弱化し、世界での競争力を失った。本連載では、IT技術を駆使した「スマートアグリ」で 世界2位の農産物輸出国にまで成長したオランダの農業モデルと日本の農業を照合しながら、日本がオランダ農業から何を学び、どのように変えていくべきかを大前研一氏が解説します。
国内6カ所のクラスターで行う大型施設園芸
オランダの農業は太陽光利用の施設園芸が中心
ここからはいよいよ、オランダの農業が「スマートアグリ」とされる真髄に迫ります。
まずは栽培方法から見てみましょう(図-15)。
栽培方法は主に、露地栽培と施設園芸に大きく分けられます。施設園芸には日本で行われているような従来型ハウス と、植物工場があります。さらに植物工場は、太陽光を利用したものと、完全に人工光で栽培するものと、2通りに分けられます。
オランダの農業は、この太陽光利用型の施設園芸が中心です。ガラスハウスなどの施設を作り、屋根を半透明にすることで太陽光を利用します。外界の環境変化の影響も受けますが、照明・暖房等を利用して、温度や湿度、CO2濃度なども制御可能です。トマト、パプリカ、メロンなどの栽培に、この方法が非常に適しています。
ただ、オランダに行ったことのある人はご存知でしょうが、あの辺りは曇りや雨の日がとても多いです。ですから、もし太陽光利用を本気でやれば、日本は絶対に負けないと思います。残念ながらドバイには負けると思いますが。
一方の完全人工光型は、完全に閉鎖された環境を作り、LEDや蛍光灯などを光源にして、温度、湿度、CO2濃度を制御しています。これは菌を嫌うようなものに適しているので、葉物野菜の水耕栽培 はこのような施設で行います。
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