ブラジルのリオデジャネイロで、2016年8月5日から8月21日にかけて南米大陸初のオリンピックが開催される。だが、現状のブラジルの政治、経済は混乱を極めており、さらに治安問題も取りざたされている。オリンピック期間中、大統領が停職中という前代未聞の状況の中、「リオデジャネイロ・オリンピックは大丈夫なのか?」という声が日本を含め世界中で聞かれる。
そこで今回は、特に懸念されることが多い現地の様子や治安を中心に、ブラジルの概観を見ていきたい。
(ブラジルへ進出している企業は、現地ビジネスにおいて数々のリスクを抱えている。その中で、治安問題、労務問題、税務等の各種手続の対応等に、多くの費用・労力を要することから、「ブラジルコスト」と呼ばれている。)
政治は混乱、経済はマイナス成長
2011年1月、ルラ政権を引き継いだルセフ政権が発足した。2014年に入ると、世界的な商品価格の下落に伴い、景気後退が鮮明となった。これに対し政府は、金融緩和政策で対抗したが、逆に景気悪化、高いインフレ率をもたらす結果となった。
2014年6月には、ブラジルでのFIFAワールドカップ開催中にもかかわらず、教育・医療等の公共サービスの改善を求めるデモが全土で頻発した。それに伴い、ルセフ政権の支持率が大幅に下落する結果となった。
2014年10月26日に実施された大統領選挙の決戦投票では、ルセフ氏が僅差で勝利し、再選を果たした。だが、直後に石油会社のペトロブラスを舞台とした汚職問題が発覚し、2015年3月以降、大規模なデモが全国で頻発した。
さらに2015年10月には、政権側が、財政悪化を隠蔽する目的で政府支出の一部を政府系金融機関に肩代わりさせる等の粉飾会計操作疑惑が発覚。2016年3月には、300万人規模の反政府デモに発展した。