世の女性は怒っている。「保育園落ちた日本死ね」という強烈な言葉は記憶に新しい。政府は女性が活躍できる社会を実現すると言うが、待機児童の問題1つとっても、改善の兆しが見えない。

 そして、共働き世代では、どうしても家事の負担は女性に多くのしかかる。後回しにした家事は積もり積もって、睡眠時間を奪い、休日を奪い、やがて心のゆとりを奪う。子育てや介護中の人であれば、時間的な制約はさらに増す。

 仕事と家庭──その狭間にうごめく大きな不満の渦。政府が「女性よ働け」と言えば言うほど渦は大きく激しくなっていく。

 どうすればこの問題を解決できるのか・・・政府の妙案を待っている猶予はない。だが、民間では解決の糸口となる新たな「しくみ」が動き出している。

 家事代行サービスで急成長を遂げる「CaSy(カジー)」は、インターネットを駆使して家事代行サービスに新風を吹き込んでいる。顧客には低価格のサービスを、そして働く人には高い賃金を実現し、その需要に供給が追いつかない状況だ。

 同社を立ち上げた胡桃沢精一さんは「社会的な問題とは、そこにビジネスチャンスがあることを意味する」と言う。

 家事代行サービス自体は目新しいものではない。実際、大手企業がいくつも存在する。そして市場は完全に膠着してしまっている。システムが古くなり、成長の余地がほとんどなくなっていたのだ。

 CaSyはここに風穴を開けた。膠着化していた市場だからこそ、新規参入のチャンスがあったのだ。同社の9割以上の顧客が家事代行を初めて利用するという。同じジャンルではあっても全く違った市場を作り出したと言えるだろう。

 世の女性の不満の声に応える形で急成長する同社の秘密を創業者の胡桃沢さんに聞いた。

「おまえ、つまんねぇな」の一言で目覚める

──家事代行サービスと聞いて、てっきり女性が起業されたのかと思ってしまいました。もともと関心があったのですか?

CaSy(カジー) 胡桃沢 精一氏

胡桃沢氏(以下、敬称略) いいえ、大学・大学院では農学部で海の環境回復を支える微生物の研究をしていました。就職先も、環境問題を解決するには政策に携わることが近道だと考え、当初は環境省や農水省、経産省を志望していました。

 ところが、その思いを友人に話したところ、「おまえ、つまんねぇな~」と言われてしまいまして(笑)。加えて「リクルートがおもしろいんじゃないか」と勧められたんです。

──なかなか手厳しいご友人ですね。なぜ民間という選択肢を勧めてくれたのでしょう。