カメルーンの試験農場でプロジェクトに携わるJICA専門家の松本俊輔氏(写真提供:JCCP M 以下同)

 手慣れた手つきで現地のスタッフが、収穫したモミをブルーシートに広げる。

「十分に乾燥させ、モミの水分量がある程度になったら、品種ごとに袋に入れ倉庫に保管します。これらは、来年、現地の農家に種もみとして配ります」とJICA(国際協力機構)専門家の松本俊輔氏は説明した。

 周囲の畑にはたくさんのモミを付け、頭を垂らした稲が植えられている。畑近くの樹々からはモミを狙っているのだろうか。しきりに鳥の鳴き声が聞こえてくる。

 ここはカメルーンの首都ヤウンデから車で20分ほどの距離にあるJICAの試験農場だ。

写真1. モミを広げて乾燥させる現地スタッフ

  カメルーンは西アフリカに位置し、ナイジェリア、中央アフリカ、コンゴ、ガボンといった国々と国境を接する。1人当たりGDPは約1300ドル、GDPの4割を農業が占める農業国だ。豊かな自然に恵まれるカメルーンは、食料の多くを輸入に頼るアフリカの国々が多い中、数少ない食料自給を達成している国である。

JICA専門家の挑戦

  松本氏はこの地で稲作の普及に挑戦している。松本氏は大学を卒業後、海外青年協力隊員として2年間、西アフリカのブルキナファソに滞在し、その後、ウガンダでJICA専門家として稲作の普及を担当した。

 ウガンダでのプロジェクトの後、2年前から「カメルーン国 熱帯雨林地域陸稲プロジェクト」に加わっている。松本氏はこのプロジェクトで、現地にあった稲の種子生産や栽培技術を検討し、カメルーン農水局の担当者にその技術を指導する役割を担当している。

 試験農場では、さまざまな品種が育てられている。品種ごとに区画を分け、「ARICA」「JASMINE」など品種名が書かれた立札が並ぶ。中には日本人になじみの「KOSHIBUKI」「KOSHIHIKARI」といった表記も見える。鳥よけの網の下には、ぎっしりとモミを付けて頭を垂らした稲穂が見える。

写真2. 試験農場で稲を収穫する松本氏と現地スタッフ