(文:鰐部 祥平)
作者:バリー・パーカー 翻訳:藤原多伽夫
出版社:白揚社
発売日:2016-02-18
「戦争にまつわる物理学の本を書いている」 著者がこう話すと、周りからは「物理学が戦争と何の関わりがあるんだい?」という言葉が返ってきたという。続けて「ああそうか、原子爆弾のことだね」と言われたという。
『戦争の物理学』(http://www.amazon.co.jp/dp/4105064312?tag=wani0501-22&ie=UTF8)という本書のタイトルを読んで同じように思った方も多いだろう。もちろん、本書では原爆の事も論じられている。しかし、それだけではない。人を殺傷する際の運動エネルギーも全て物理の法則にのっとり行われている。本書は古代から現代までの兵器の変遷を物理学の視点から読み解いた、一風変わった作品だ。
本書は、それぞれの時代の兵器の変遷を説明し、その兵器がいかに活躍したかを戦記風に記述した後、兵器にまつわる物理的な話へと移る、という構成が取られている。このため、歴史好きの人にもお勧めできる一冊だ。
騎士たちの鎧を貫くロングボウのエネルギー
例えばロングボウという弓の話は、「100年戦争」のさなか、ロングボウの活躍により圧倒的な兵力差を誇る重武装のフランス騎士たちをイングランド軍が次々に血祭りにした、クレシーの戦いの戦場の記述から始まる。このため、歴史好きの読者ならば、すんなりと読み進める事が可能だ。ここからクロスボウの技術的な話へと移り、最後に物理の話になる。
では、ロングボウの物理とは、どんなものなのか。これは、そもそもなぜ矢が飛ぶのかをまず知る必要がある。