(写真はイメージ)

(東京より)

 世界経済は行き詰まっている。ユーロ圏は通貨統合によって自由になることはなく、かえって足かせをはめられている。日本はアメリカの金融正常化政策の減速によって苦しんでいるし、世界の新興国市場は中国の経済政策の失敗によって苦しんでいる。

 しかし世界経済の状態が悪いからといって、各国の中央銀行は、いまだ試されたことのない政策をそのリスクを無視して実行することはできない。とりわけ、多くの者が提案する「ヘリコプターマネーのばらまき」については。

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 1969年にミルトン・フリードマンが(実際の提案ではなく)思考実験の一環として考え出した、「ヘリコプターマネーのばらまき」は、頭上でビューンと音を立てて飛ぶヘリコプターからお札をばらまくという夢のような光景から名付けられた。

 しかし、この「ヘリコプターマネーのばらまき」理論の要点は、単純に新札を(戻し減税などの形で)消費者に配れというものである(元アメリカ連邦準備制度理事会の議長であったベン・バーナンキは、最近「理事会に残された手段は何か?」という寄稿の中でこの施策を「マネーによる財政プログラム(MFFP)」と呼んでいる)。

 この50年以上の間、各国の中央銀行は度々、MFFPの実行を却下していた。しかし現在、総需要の低迷が長期化し、インフレが目標を下回り、経済成長の伸び率が減速している中で、世界の経済学者たちは血眼で「救いの手」を求めている。そして彼らの中には、「救いの手」すなわち「ヘリコプターマネー」を求めてヘリポートへ向かうという者もある。