自民党で、厚生労働省の分割論が浮上している。小泉進次郎氏ら若手議員を中心とした「2020年以降の経済財政構想小委員会」で、厚労省のあり方の議論を始めた。小泉氏は「行政のあるべき姿として厚労省が今のままでいいとは誰も思っていない」と組織の見直しに強い意欲を示し、5月中にも分割案をまとめるという。
塩崎恭久厚労相は「行政改革で1つの官庁を狙い撃ちにするのはおかしい」と反発しているが、稲田朋美政調会長は小泉氏をバックアップする構えだ。厚労省の破綻した社会保障システムこそ、財政赤字の元凶だからである。
社会保障の赤字の穴埋めが政策経費の半分以上
社会保障給付は、2015年度で約110兆円。これに対して社会保障特別会計には65兆円しかないので、一般会計から社会保障関係費31.9兆円を支出している。厚労省一つで一般会計の総額を超える110兆円もの予算を管理し、その3分の1が赤字という異常な状態だ。
この社会保障関係費はまぎらわしい名前だが、社会保障特別会計とは別の赤字補填である。これが一般歳出(国債費・地方交付税を除く政策経費)57.8兆円の半分を超えている。急速に進む高齢化で、政策経費の半分以上が社会保障の赤字の穴埋めに食われていることが、財政危機の最大の原因だ。
公共事業のような裁量的経費は、インフラ整備が行きわたれば減り、公共事業費は今は6兆円しかない。それに対して社会保障給付のようなエンタイトルメント(定額給付)は、何もしないと受給者が増えるにつれて増え続け、野党も止めようとしない。
日本の金融資産の60%は60歳以上がもっている。たしかに所得は年金になると現役のときより減るが、資産ベースで考えると、今の年金制度は貧しい現役世代から豊かな高齢者に逆分配している。
しかも高齢者はその資産をほとんど使わず、消費意欲のある現役世代は可処分所得が低いので消費も落ち込む。今の政府債務を返済するには、将来は消費税は30%近くまで上げる必要がある。それに備えて現役世代が貯蓄していることが、今の消費不況の原因だ。