「そうりゅう」型2番艦「うんりゅう」(写真:海上自衛隊)

 かねてより史上最大級の武器取引として注目を浴びている、オーストラリア海軍次期潜水艦を選定する作業の結論が、数週間以内に出される見通しである。

 選定の対象となっている潜水艦は、日本の「そうりゅう」(三菱重工・川崎重工)、ドイツの「タイプ216」(TKMS:ティッセンクルップ・マリン・システムズ)、それにフランスの「ショートフィン・バラクーダ」(DCNS:造船役務局)である。

「そうりゅう」採用派が唱える戦略的理由とは

 日本の「そうりゅう」の採用を支持するオーストラリアの人々の多くは中国脅威論に立脚している。つまり、中国が南シナ海とりわけ南沙諸島に軍事拠点を設置することにより、オーストラリアと中国の間の軍事的緊張が高まった場合にはオーストラリアが利用しているシーレーンが脅威を受けるだけでなく、ダーウィン周辺地域は中国軍爆撃機の攻撃圏内にすっぽりと収まってしまうといった想定がベースにある。

 このような軍事的脅威を抑止するために、または万一の場合には中国海洋戦力と対決するために、オーストラリアはアメリカとの同盟関係を強化するとともに、日本との軍事協力を進展させて豪米日軍事同盟的なネットワークを構築するべきである、という主張だ。

 一方、日本の側から見ると、安倍政権が「そうりゅう」の売り込みに躍起になっているのは、三菱重工や川崎重工の経済的利益を確保するためではなく、日米豪同盟関係を生み出して中国の軍事的脅威に対抗しようという、政治的国益を手に入れるためである。