アメリカの大統領選挙では「在日米軍は撤退すべきだ」などと主張するドナルド・トランプが、共和党の候補になる公算が強まってきた。本戦では民主党のヒラリー・クリントンに勝てないという見方が強いが、このような孤立主義が大きな支持を得たことは、今後のアメリカ外交に影響を及ぼすだろう。
これについて共産党の山下芳生書記局長は、記者会見で「共産党は在日米軍基地の解消を展望している。その点ではトランプ氏の言っている方向と一致する点がないわけではない」と彼を応援した。民進党も「安保法制の廃止」を主張する孤立主義はトランプと同じだ。
トランプの孤立主義はアメリカの伝統
トランプの孤立主義は日本人には過激にみえるが、アメリカの共和党には根強い。アメリカは独立戦争でイギリスから独立したのだから、ヨーロッパの秩序には責任も義務もない。それより大事なのは南北アメリカ大陸の平和だ──というのが、モンロー主義として知られるアメリカの伝統的な外交方針だ。
ニューヨークタイムズのインタビューで、トランプは「日本と韓国が米軍の駐留経費を大きく増やさないと米軍を撤退させる」といい、その代わりに「日韓が核武装してもいい」と語った。
アメリカにとって日本は、冷戦期には極東の防衛線として重要だったが、今やソ連も中国も米本土まで攻撃してくる国ではない。巨額の政府債務を抱えるアメリカが、他国の防衛に軍事費を使うべきではないというトランプの主張は、アメリカでは少数派ではない。
安保法制は、こうしたアメリカの撤退を防ぐために日本も一定の防衛責任を分担しようとするものだが、野党はこれに反対し、沖縄の米軍基地の辺野古移転に反対している。