NHK(東京都渋谷区)の建物。テレビ局に政権からの圧力はあるのか?(資料写真)

 今年の春は、テレビの人気番組のキャスターが相次いで交替する。「クローズアップ現代」の国谷裕子氏、「報道ステーション」の古舘伊知郎氏、「ニュース23」の岸井成格氏など、政府に批判的なキャスターが交替するのは「政権の圧力」だ、と騒がれている。

 他方、高市早苗総務相が国会で「放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、電波停止を命じる可能性がある」と答弁したことに野党が反発している。

 政権とマスコミの関係はたびたび話題になるが、よくいわれるように「官邸が圧力をかけてキャスターを下ろす」といったことがあるのだろうか。

政権が直接圧力をかけることはありえない

 私は「クロ現」の発足当初のメンバーであり、政治番組も担当したことがあるが、政府から直接、圧力を受けたことは一度もない。古賀茂明氏が「報ステ」で言ったように、「官房長官がテレビ局に電話をかけてくる」といった圧力はありえない。

 ただ間接的にクレームがつくことはある。国谷氏の場合は、菅官房長官へのインタビューで彼女が「日本が戦争に巻き込まれるのではないか」と同じ質問を繰り返し、答の途中で番組が終わったことに補佐官が抗議したといわれるが、そういう苦情はよくある。

 しかしその程度で番組の内容が変更されることはまずない。そんな前例をつくったら、ますます政治的な介入が強まるからだ。むしろテレビ局の幹部が政治家に迎合して、現場に言ってくることが多い。