日本銀行は先週の金融政策決定会合で、マイナス金利を決めた。といっても一般の銀行預金の金利がマイナスになるわけではなく、銀行が日銀に預けている当座預金の一部に適用されるだけだ。
この「サプライズ」で株価は大きく上がり、円も一時は1ドル=120円台になったが、4日にはマイナス金利前の水準に戻った。この政策転換は、黒田総裁が「量的・質的緩和」から撤退し、金利を中心とする普通の金融政策に戻ったことを意味するが、その後の戦略は見えない。日銀は一体どこへ行くのだろうか?
「期待」に働きかける政策からの撤退
まず「マイナス金利」の意味をはっきりさせておこう。これは下の図のように、日銀が市中銀行に対して発行した日銀券のうち、銀行が日銀に預けている当座預金の金利のうち「政策金利残高」の部分の金利をマイナス0.1%にする(手数料を取る)だけで、一般の預金者には関係ない。
ただしこのマイナス金利の部分は当面、10兆円程度といわれているので、その0.1%でも100億円だ。地方金融機関にとってはかなりの負担だが、それを顧客に転嫁するのは難しい。ATM(現金自動預払機)の手数料はマイナス金利のようなものだから、当面は一般預金者には影響はないだろう。