3~4年前だったと思うが、爆笑問題の漫才でこんなネタがあった。

田中「このところ警察官の不祥事が多いよね」
太田「万引きに、痴漢に、大麻所持だって」
田中「本当に、どうなっちゃってるんだろう」
太田「この間なんて、空き巣に入られた家を捜索中に財布を盗んじゃった警官までいてさ」
田中「何を考えてるんだろうね」
太田「いやいや、朱に交われば赤くなるって言うから」
田中「それがどうしたっていうんだよ」
太田「ほら、警察官ていうのは悪いやつとばかり付き合ってるだろ。万引きしたやつとか、痴漢をしたやつとか、大麻を吸ってるやつとかさ。そいつらを逮捕したり、尋問したりしてるうちに悪いところがうつっちゃうんだよ」
田中「そんなわけねえだろ」

 うまいことを言うものだとケタケタ笑わせてもらったが、「そんなわけねえ」かどうかは難しいところである。

 太田光にならって、「朱に交われば赤くなる」と言いたいわけではなくて、警察官であっても、犯罪及び犯罪者とばかり向き合っているのは相当しんどいことなのではないだろうか。

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 小学4年生のある日、近所の本屋で立ち読みをしていると、店の奥から主人の怒鳴り声が聞こえた。

 どうやら万引き犯を捕まえて事務所に連れていったらしく、親を呼ぶから名前と電話番号を言えと迫っている。さもないと警察に引き渡すぞと脅しても、開き直っているのか、それとも怯えて返事ができないのか、店主の怒声ばかりが響いて、私は恐くなって本屋から逃げ出した。

 万引き犯に対してさえ、人はあそこまで憤るのだから、強盗や殺人を行なった犯人を逮捕する警察官はより強い憤怒にとらわれるに違いない。

 車同士の交通事故で、相手側に過失があると言い合う双方のドライバーから事情を聞くのだって、精神衛生上よくないに決まっているし、殺害された死体を見れば、動揺を抑えるのには余程の精神力が必要になるだろう。