7月末、パキスタンを襲ったモンスーンは、インダス河の広範な流域に洪水を引き起こし、1500万人もの住民が被災した。

大規模災害の前には先進国でも無力となる

 すぐさま国際社会は救援へと動いたが、復興は遅々として進んでいない。途上国では、何かしらある社会構造上の欠陥から、被災地まで援助物資が滞りなく届かないのが常なのだ。

 もっとも、それは途上国だけの問題ではないようだ。

 2005年米国南部を襲ったハリケーン・カトリーナによるニューオーリンズの洪水被害は、世界一の先進国を自負する米国内の出来事であることから、速やかに救援が進むものと思われていた。

 しかし、結局は呆れるほど何もできない大国の現実を世に知らしめることになってしまう。

 ミシシッピー河口の大都市ニューオーリンズは、いまだ完全復興にはほど遠い状態であることを、5年経った今、メディアは繰り返し伝えている。罹災民の多くを黒人が占めていることから、実は人種差別が原因で復興が進まないのではないか、との指摘がある。

「1927Louisiana」が収録されている作者ランディ・ニューマンのCD

 南部はいまだに差別意識が根強い地域だからである。

 ミシシッピー河流域はこれまでも度々洪水被害を受けてきた。1927年4月には、河口のルイジアナ、ミシシッピーからアーカンソーやケンタッキーといった上流に至るまで広範囲にわたって被害が及ぶ米国史上最悪の洪水が引き起こされている。

 ハリケーン・カトリーナ復興支援コンサートでも唄われた「Louisiana 1927」という曲には、その時のニューオーリンズの洪水被害の様子が描写されている。

 そこではカルビン・クーリッジ大統領(当時)が被災民を「Crackers」という「白人の貧農」を意味する差別用語を使って呼んでおり、有色人種ばかりか白人貧困層をもあからさまに差別していたことが読み取れる。