ロシアが北方領土における軍事力建設を進めていることが話題になっている。
12月1日、軍幹部と会談したショイグ国防相が、北方領土に392の軍事施設を建設するなどと発言したことが特に注目されているようだ。
ただ、これについては数字だけが一人歩きしている感がある。
第1に注意せねばならないのは、これは392カ所の軍事基地を建設するのではなく、国後島と択捉島の駐屯地内に建設される建造物の数を示したものだ。
要するに、司令部施設や兵舎や装備の格納庫、官舎、幼稚園、病院・・・といったものを合わせると2島で392「棟」になるという話であって、この点は押さえておかねばならない。
笛吹けども踊らず
第2に、ショイグ国防相の発言については北方領土における実効支配の「加速」という論調で報じられることが多いが、これまでの経緯を振り返れば、実際の歩みは遅々としたものであった。
そもそもロシア軍参謀本部が北方領土の軍事力近代化計画を作成したとされるのは2011年3月のことである。
同年11月、ブルガーコフ国防次官は向こう2年間で北方領土の軍事インフラ近代化にメドをつけると述べ、2012年にはマカロフ参謀総長(当時)が5カ所の軍事基地を2カ所に集約するなどの方針を明らかにしていた。
択捉島と国後島の軍事施設を各島1カ所に集約して合理化するとともに、市街地に近い場所に移して軍人の生活の便を向上させることも念頭に置いていたようだ。
が、これ以降、北方領土の軍事力近代化に関する具体的な動きは途絶えてしまう。