人の流入は、独立国家共同体(CIS=旧ソビエト連邦12カ国による国家連合)など近隣諸国や中国、ベトナムからの労働者のほか、かつて1990年代に米国シリコンバレーなどへ流出した人材が還流してくる流れもあるという。メドベージェフ政権が製造業やハイテク育成を目指す「経済近代化」を掲げていることが、優秀な人材の故郷への回帰を後押ししているのだ。
自動車買い替え支援優遇制度や低金利など、政策対応の効果もある。投資の回復にはもう少し時間がかかりそうだが、金融危機前のやや過熱した経済状況からは、よりバランスの取れた経済へと移行しつつあるように見える。
財政・金融政策は平常モードに
ロシア中央銀行(筆者撮影)
大幅な景気後退により財政は2009年にGDP比▲5.9%の赤字に転じた。2010年も▲5.4%程度の赤字が見込まれるが、2008年までに積み上げた準備基金、国民福祉基金の取り崩しによって財政赤字補填を行っているほか、今後、国営企業株式の売却代金も赤字補填に充当される見通し。このため、目先、財政危機を懸念しなければならない状況ではない。
一方、中央銀行は6月の利下げ以降、政策金利を据え置いている。経済の順調な回復とインフレの落ち着きから、しばらくは静観していられそうだ。ルーブル相場も安定推移を保っている。財政・金融政策ともに、警戒モードから平常モードへとスイッチが切り替わった。
不動産価格の回復で銀行経営の最悪期脱出
国営銀行スベルバンク(筆者撮影)
国営銀行や民間の大手銀行とのミーティングで分かったのは、「不良債権比率は高止まりしているものの、ほぼピークアウトした」ということだ。現在の水準であれば、今後の収益で処理していくことが十分可能と考えられる。不動産業向け貸し出しの不良債権化が最も懸念されていたが、不動産価格の多くが危機前に戻っているので、やはり最悪期は脱したと見ていいだろう。
銀行各行は金融危機後に審査プロセスの強化に取り組んでおり、流動性リスクの管理を含め、危機を踏み台にして内部のリスク管理強化を進めようとしている。
