中国の習近平国家主席が米国を公式訪問したが、中国側にとってはローマ法王の訪米と重なる最悪のタイミングであったし、対立が顕著であった米中首脳会談を経て極めて気まずい訪問となったと思う。
中国側は、習主席の訪米のタイミングがローマ法王の米国訪問と重なることにかねて懸念を示していたが、その懸念通りになってしまった。
米国のマスメディア特にCNNなどのテレビ局は終日ローマ法王のワシントンDC、ニューヨーク訪問を報道し、習主席の米国訪問はほとんど報道されなかった。米国民にとってローマ法王の存在感に比し習主席の存在感はなきに等しい状況なのである。
首脳会談全体の評価については厳しい論評が米国においても日本においても多いと思う。外交的に合意を演出して見せたが、合意事項の今後の実行に関しては疑問が残るという評価であろう。
バラク・オバマ政権は中国の国家ぐるみのサイバー作戦に対して事前に経済制裁をちらつかせるなど従来に比し厳しく対応する姿勢を見せた。
8月末にスーザン・ライス国家安全保障担当大統領補佐官を中国に派遣し、米国企業に対しサイバー戦により情報を窃取した中国企業25社を経済制裁の対象であることを通告したという情報もある*1。
しかし、結果的には制裁は表明されなかった。また、南シナ海における中国の人工島建設についても米中の主張が対立したまま実質的な成果がなかった。オバマ大統領は、米国の国益を毀損する中国の不当な言動に対して断固たる姿勢を示すことができないという過去何回も犯してきた同じ間違いを繰り返してしまった。
オバマ政権は、政権誕生以来6年以上にわたり「中国の平和的台頭を期待する」と言ってきた。しかし、中国の現実は、東シナ海や南シナ海における不法な活動、米国などに仕かける不法なサイバー戦などで明らかな様に決して平和的な台頭ではなく強圧的な台頭であった。
オバマ大統領は、首脳会談の前に、「米中の対立が不可避であるとは思わない」と発言したが、「米中の対立は不可避である」と私は思う。
米国で生活していると、米国内には中国をいかに認識し対処するかに関し多様な意見があることを実感する。米国内の対中認識に関しては3つのグループに分けると理解しやすい。
第1のグループは、中国の横暴な現実に直面しても主張を変えず、「中国との対話を重視し、中国を国際社会のルールを守り世界の諸問題の解決に貢献する国家に導くべきだ」という意見である。
第2のグループは、かつては中国との対話を重視したが、中国の現実に接して自分たちの対中国認識が間違っていたと反省し、中国に対して厳しく対応すべきであると主張を変えた人たちである。
第3のグループは、昔から一貫して中国の覇権主義的な本質を理解し「中国の台頭は強圧的になる」と主張してきた人々である。
*1=9月29日付朝日新聞記事