画像はノーベル財団ホームページより

 2015年10月5日、ノーベル生理学・医学賞にWilliam C. Campbell氏、大村智氏、Youyou Tu氏が選ばれました。

 受賞理由は、Campbell博士と大村博士が「回虫の寄生が引き起こす感染症に対する新しい治療法に関する発見」、Tu博士が「マラリアに対する新しい治療法に関する発見」です。人類が数千年にわたり苦しめられている感染症の根絶に向けた成果です。

世界の3分の1の人を苦しめる寄生虫感染症

 感染症は人々の健康や命を奪う人類の敵。特に寄生虫による感染症は今でも世界の3分の1、20億人以上が苦しめられていると推定されています。例えば以下の3つです。

Elephantiasis(象皮病)、River Blindness(河川盲目症)、Malaria(マラリア)は地図の青いところ(熱帯)でよく見られ、他の感染症と含めて熱帯病と括られます。画像はノーベル財団のプレスリリースより、以下同。

 1つは、クロバエが媒介する回旋糸状虫(回虫)が引き起こす感染症で、皮膚に激しい痛みを感じ、重症になると角膜で慢性炎症が起きて失明します(河川盲目症といいます)。

 2つめが、蚊が媒介するフィラリアが引き起こす感染症で、リンパ系がダメージを受け、足が象のようにふくれあがります(象皮病といいます)。

 そして、マラリア。蚊が媒介するマラリア原虫によって引き起こされ、高熱が特徴です。現在でも1年間に約2億人が感染し、年間50万人以上の死者 を出しています。マラリアは主に熱帯で見られるので日本ではなじみが薄いのですが、世界ではHIV(エイズ)、結核と並んで三大感染症に含まれています。

日本のゴルフ場から見つかった抗生物質

 大村博士は微生物学者であり、土壌中にいる細菌を大量培養する手法を使って、年間2000~4000株の菌を分離してきました。あらゆる場所でサンプリングを行い、今回の受賞に繋がった微生物も、ゴルフコースにほど近い場所から分離されたというエピソードが話題になっています。

 土壌の中から見つけた細菌を培養。その中から抗生物質を作る細菌を発見。(富士山やゴルフボールも描かれています)