日本は実はIT後進国。高齢者だけでなく十代の若者の間でも欧米に比べてパソコンの保有率は低い(写真はイメージ)

 財務省が提示していた、消費税率10%への引き上げに伴う軽減税率案が白紙撤回された。一旦、消費税を徴収してから還付するという、消費者にとっては手間のかかる方法だったことに加え、マイナンバーカードを利用することについて懸念する声が続出した。政府は今後、代替案について議論を進め、年末までには結論を出したい意向だ。

 財務省が、消費者に負担を強いる案を出さざるを得なかった背景には、IT化の遅れという日本特有の問題が関係している。これまで覆い隠されていた問題が、軽減税率の導入によって一気に表面化したといってもよいだろう。

財務省は使い勝手の悪さについて百も承知している

 財務省が9月8日に提示した軽減税率制度は、あちこちから異論が噴出する結果となってしまった。欧州で導入されている消費税の軽減税率制度では、基本的に消費者側の負担は発生しない。品目によって消費税が全額かかるものとそうでないものに分けられており、軽減税率の対象となっている商品については、清算時、自動的に消費税が減額される仕組みになっている。軽減税率と聞いて多くの人がイメージしたのはこの方式であった。

 だが財務省案では、一旦、10%の消費税を徴収した後、消費者は軽減税率対象分の消費税を後日還付してもらうという方式になっていた。しかも、消費税の還付を受けるためには、消費者は買い物をする際にマイナンバーカードを提示し、何を買ったのかすべてカードに記録しなければならない。

 マイナンバーカードにはすべての記録が残されてしまうため、プライバシーの観点からこれに抵抗感を持った人は多かったと考えられる。またマイナンバーカードを忘れてしまった場合にはどうするのか、子供のお使いにマイナンバーカードを渡すのは不安ではないか、といった意見も聞かれた。マイナンバーカードを整備するためには高額のシステム費用がかかり、財政上の負担となることが懸念されたほか、還付金額に上限が設定されたことも問題をややこしくした。