ソウル市内のロッテホテル。このビルの34階にロッテ創業者の重光武雄(辛格浩=シン・ギョクホ)氏が住居兼執務室を構えている

 ロッテで起きている経営権を巡る紛争は、当初の兄弟間の対立劇から親子、親戚を巻き込んで迷走を続けている。創業会長の指示書や映像が公開され、日韓企業の社長は「次男支持宣言」を出すなど、当事者は大真面目だが、ドラマを超えたマンガのような珍事が繰り広げられている(JBpress2015年7月31日付「ロッテで勃発した財閥韓流ドラマ」参照)。

 日韓をまたぐロッテグループで起きた経営権を巡る紛争は、韓国では大きなニュースだ。ここ1週間、テレビのニュースも主要紙も連日、トップで大きく報じ続けた。

 韓国5位の財閥で起きた紛争。家族間のどろどろとした争いが格好のニュースになった。

 最初は、視聴者や読者の好奇心を刺激したが、連日の報道に、韓国内では「嫌気」と「不快感」が蔓延している。財閥支配を巡る家族内の争いにはうんざりという雰囲気だ。

はじめは「兄弟対立」だったが・・・

 7月27日にロッテ創業者の重光武雄(辛格浩=シン・ギョクホ、韓国でのタイトルは総括会長、1921年生)氏と長男で2015年初めまでに日本のロッテホールディングス社長などを解任された重光宏之(辛東主=シン・トンジュ、1954年生)氏が突然、東京・新宿のロッテホールディングスを訪問して役員の解任を指示したことが今回の騒動の発端だった。

 翌日、ロッテホールディングスの取締役会で、解任指示の無効を確認するとともに、創業者が代表権返上し、名誉会長に就任することが決まった。東京にいた次男の重光昭夫(辛東彬=シン・トンビン、韓国での肩書きは会長、1955年生)氏は同社の代表取締役に就任していたが、父親の人事については取締役会でも棄権したという。

 このあたりまでは、ロッテグループの後継の座を巡る兄弟の争いと見る向きが一般的だった。日本のロッテホールディングスの社長などから解任された宏之氏が「親の威光」を借りて巻き返そうとして失敗した。そういう見方だった。

 「クーデター鎮圧」とまで韓国紙は報じた。

 ところが、事態はそう簡単には終わらなかった。