やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

 第26、27代連合艦隊司令長官、山本五十六のこの言葉、特に最初の一文はあまりに有名である。人を動かし、人を育てる上での心理学のエッセンスがこの言葉に凝縮されている。

 この言葉に感銘を受けた経営者や管理職の方は少なくないだろう。しかし、感銘は受けてもこの言葉の内容を日々実践できているだろうか。実践できている人もいれば、実践できていないと反省する人もいるだろう。

 現場の人が育たず、結局、自分がほとんどの仕事をやらなければいけないので、いつまで経っても忙しさから抜け出せない。そう頭を抱える経営者や管理職の方からのご相談をよく受ける。

 私が受ける様々なご相談の中でも断トツに多いご相談である。その際に、この山本五十六の言葉を引用すると、「分かっちゃいるんですが、できていません」との答えがほとんどである。

人が育たないときの3つの選択肢

 なぜできていないのか、理由を聞くと、いろいろな理由が出てくる。

 どの理由も「なるほど」と思えるものであるし、気持ちもよく分かる。しかしどのような理由があれ、できていないことは事実である。

 この場合、3つの選択肢のいずれかを選択しなければならない。

(1)人を育てることをあきらめ、全て自分でやるようにする。
(2)今の現場の進め方を改め、人を育てることを最優先事項にする。
(3)自分がやっている仕事を任せられる即戦力となる人を新たに雇う。

 いずれを選ぶかの判断を行う上では、まずどういった働き方をしたいのかを自らの中で明確にすることが必要になる。