競争が激化の一途をたどる国際情勢、経済社会。毎日のように至る所で勝った負けたのドラマが繰り広げられている。
この世界のあらゆることには陰と陽の関係が存在する。勝負に勝つ者がいるということは、勝負に負ける者がいるということを意味する。
世間は勝者にスポットライトを当てる。しかし、カリスマと呼ばれるリーダーや指導者は負けた者にスポットライトを当て、勝者へと変化させる。
人は負けた時、心の感度が高くなる。読みなれた本でも、落ち込んだ時に読むとぐっと心に沁みてくる。
聴きなれたバラードでも、悲しみに暮れた時に聴くと涙がこぼれそうになる。ちょっとした人の親切がとても温かく感じられる。
6人の世界チャンピオンを育てたタウンゼント
負けた時にしか味わえない感覚がある。心の感度が高い時、人は変化と成長のチャンスを迎える。
ガッツ石松、井岡弘樹ら6人の世界チャンピオンを育て上げ、名トレーナーとして知られるハワイ出身のボクシングトレーナー、エドワード・タウンゼント。
彼は来日した際、当時日本のボクシングジムでは当たり前だった指導用の竹刀を見てこう言った。
「アレ捨ててよ。アレあったら僕教えないよ。牛や馬みたいに叩かなくてもいいの。言いたいこと言えば分かるんだよ」
彼は竹刀で叩いてしごく当時の指導スタイルを真っ向から否定し、ハートで語りかける育成スタイルを貫いた。