ニュース記事の配信契約を巡って争ってきた米グーグルと米AP通信は8月30日、両社が新たな契約を結ぶことで合意したと発表した。
グーグルはAP通信にニュース記事のライセンス料を支払うほか、ウェブ媒体における記事の露出や、収益化でAP通信に協力するという。
AP通信によると、グーグルはフランス通信社(AFP)、英通信協会、カナダ通信などの通信社とも同様の契約を結んだもよう。
2005年、AP通信やフランス通信社などの大手通信社は、グーグルが自社の検索サイトやニュースサイトで、通信社のニュースを無断で集め、ヘッドラインや要約、写真を掲載しているとし、その行為が著作権侵害にあたると非難。一部では訴訟にまで発展した。
一連の係争は2006年から2007年にかけて和解に至っており、グーグルは各社とライセンス契約を結んだが、AP通信は後になって契約内容が通信社側に不利だと主張。今年1月の契約切れをきっかけに内容の見直しを迫っていたが、これまで膠着状態が続いていた。
「他人の著作物で利益を上げる行為」とメディア王
これまでのグーグルの主張は一貫して次のようなものだった。
「ウェブ上に公開されている情報を集め、ユーザーが検索できるようにしたり、その抜粋を確認できるようにすることは米国著作権法における“公正使用”の範囲にあり、グーグルはライセンス料を支払う必要はない」
これに対し、メディア王として知られる米ニューズ・コーポレーションのルパート・マードック会長は「他人の著作物で利益を上げる行為だ」と激しく非難していたが、グーグルはこれに「当社のサービスは新聞社などメディア企業のウェブサイトにユーザーを誘導することに貢献している」と反論、主張を曲げなかった。
ところがメディアにニュースを配信する通信社は自前でニュースサイトを持たないため、そうした恩恵も受けられない。ネットユーザーを誘導し、広告収入につなげるといった手だてもなく、ただただグーグルに著作権を侵害されるばかりだ。これがAP通信の主張だった。