今年のアカデミー賞で、作品賞、監督賞など4部門受賞の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)が劇場公開中である。

 『21g[21グラム]』(2003)『バベル』(2006)など、深遠なテーマを描き続けるアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作品と聞くと、一歩引いてしまう人がいるかもしれない。

 しかし、今回は、冒頭から、コメディ、ファンタジーの要素を見て取れる少々色合いの違う作品。その映像も魅力的だ。

 『ゼロ・グラビティ』(2013)に続きアカデミー撮影賞を得たエマニュエル・ルベッキのカメラが、アントニオ・サンチェスのドラムスに誘われるように、のらりくらり徘徊し登場人物に同行する視線が、見る者を映画の世界に誘う。

 もちろん、シリアスドラマも健在だ。かつてスーパーヒーロー「バードマン」として一世を風靡しながら、シリーズ途中で降板、その後パッとしない俳優の、一発逆転狙いのブロードウェイデビューをめぐる物語は、人生の意義を深く考えさせる。

アメコミ映画ばかりへの痛烈な批判

 そんな主人公リーガンを演じるのは、かつて『バットマン』(1989)で大ブレイクしながら、2作で降板したマイケル・キートン。ブラックなコメディセンスが光る。

 そして、マイケル・ファスベンダー、ジェレミー・レナーなどスーパーヒーロー俳優の名を皮肉たっぷり挙げながら、急きょ決まる劇中劇主役は、映画とは無縁の名舞台俳優という設定。

 しかし、演ずるエドワード・ノートンは、舞台でも映画でも経験豊富な『インクレディブル・ハルク』(2006)でスーパーヒーローも演じた演技派俳優。

 さらに、『アメイジング・スパイダーマン』(2012)のヒロイン、エマ・ストーンを加え、3人すべてが、アカデミー賞ノミネートという現実までもが、アメコミ映画ばやりの現状への痛烈な皮肉となっている。