現在劇場公開中の映画、『イミテーション・ゲーム』

 必要は発明の母だと言われる。争いはイノベーションの源だと言う者もいる。

 航空機、電子レンジ、合成ゴム、ナイロン・・・いまや当たり前のように存在するテクノロジーの産物に、戦下の研究が大きく貢献したものは少なくない。勝つための科学は兵器の進化を生み、軍事研究の日常転用は生活を便利なものへと変えてきた。

 戦時、国家は、コストに少々目をつぶってでも、必要とあらば、研究者に実験の場を与える。拒めば、結果が出なければ、非国民扱いされる恐れさえあるなか、何よりも、生き抜くための必死の努力、火事場の馬鹿力が、成果を導くのだろう。

 現在劇場公開中の『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014)は、第2次世界大戦中、最強と言われたドイツ軍の暗号「エニグマ」(謎、難問の意)解読に挑んだ英国の数学者、チェス・チャンピオンなどの人々と国家の「秘密」の物語。

 主人公となるアラン・チューリングが開発したマシンで暗号解読に成功、終戦を2年早めたと言われるほどの成果をものにする様子が描かれる。

チューリングが論文で示した「イミテーション・ゲーム」

 チューリングと言えば、コンピューター・サイエンス分野最高権威の賞と言われるのが「ACMチューリング賞」であることからも、その存在の大きさがうかがえる「天才数学者」。

 題名となる「イミテーション・ゲーム」も、「機械は考えることができるのか」を問う1950年の論文でチューリングがテスト法として示したものである。

 もともとは、隔絶された場所にいる2人の人間、女性を「イミテーション(模倣)」する男性と本物の女性と、テレタイプなどでコミュニケートして、2人の性別を判断するゲーム。