かつて企業内のITは、ペーパーレスや業務の重複排除など「効率化」「省力化」を狙ったものが多かったが、徐々にITを使うことによる「収益への貢献」が求められるようになってきた。企業のIT活用に取り組んできた方々は、そのことを強く実感されているはずだ。

「効率化」に向けてITの活用を図っても、実際にはなかなか人を減らすことができなかったり、より付加価値のある仕事にシフトしようとしてもその定義が曖昧であったりして、「お金がかかる割には効果はどうなのだ?」という疑問がよく聞かれた。

 そこから経営陣は「売上につながる」「戦略策定に生かされる」IT活用を求めるようになり、今で言う「CRM(Customer Relationship Management)」や「BI(Business Intelligence )」などにも力を入れるようになってきた。

 この「収益貢献」というテーマは、経営者にとっては重大な問題なことであり、投資の意思決定に大きく影響する。

 筆者はリーマン・ショックの真っ只中にある企業で、ほとんどのITプロジェクトは凍結になったが、市場の動きを分析するためのBIなど戦略判断に影響するプロジェクトだけは投資が継続されたのを目の当たりにしたことがある。

 今後も「収益貢献」は、IT活用のキーワードとして欠かせないものであり続けるだろう。

これからのIT活用は「顧客」にアクションを促す

 ただし、その中身についてはこれから変化が見られそうだ。これまでは自社の業務システムとして武装化していたわけだが、対顧客、対パートナーなどの対外的な部分に大きくシフトをしていく兆しが見られる。

 ITを導入して、そこにある情報やツールを武器に事業戦略立案や営業活動を行うといった「自社の活動をより良くして収益貢献する」という、いわば自らの「アクション」が求められるものがこれまでの主役であった。