デフレが続く中で財源が枯渇し、有効な景気対策を打てない苛立ちからか、政治家の日本銀行への風当たりが強まっている。
民主党の有志議員が「デフレ脱却議員連盟」を結成し、日銀法の改正やインフレ目標の設定などを民主党執行部に提言した。みんなの党も、日銀法の改正を含む「デフレ脱却法案」を秋の臨時国会に出す予定だ。
政治家がデフレに関心を持つのは結構なことだが、デフレを脱却する政策として、日銀の独立性を弱めて言うことを聞かせようという話ばかり出てくるのは、どういうわけだろうか。
インフレ目標だけではインフレは起こせない
デフレ脱却議連の副会長である民主党の藤末健三氏は、「今、最優先すべき金融政策はインフレ目標の設定だ」としてこう書いている(東洋経済オンラインの記事より)。
<一言で(中央銀行の)「独立性」といっても、「目標の独立性」と「手段の独立性」の2種類があり、尊重されるべきは後者の方である。5月に来日し日銀で講演を行ったFRB(連邦準備制度理事会)のベン・バーナンキ議長も、「目標の独立性はありえない」と言っている。>
バーナンキ議長が言う「目標」とは、インフレ目標ではない。法律でインフレ目標を定めている国は存在しない。藤末氏は「世界標準」を振り回すが、それならばFRBもECB(欧州中央銀行)もインフレ目標を採用していないのはなぜか、説明してほしいものだ。
そもそも日銀法でも「目標の独立性」はない。第4条では「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」と、政府との協調が定められている。
実際にはデフレ脱却議連の提言でも、みんなの党の法案でも、政府に日銀総裁を解任する権限はなく、「説明責任」を求めるに留まっている。