筆者が不在だった8月17日から23日の1週間のマーケットでは、大きく動いた部分と、あまり動かなかった部分があった。

 最も大きく動いたのは、日米欧の長期金利である。

 10年物国債利回りは、日本で0.900%、米国で2.53%、ドイツで2.24%まで、それぞれ一段の低下を演じた。米独については、筆者が節目とみていた水準からさらに20~25ベーシスポイントほど下がったことになる。超長期ゾーンの金利低下も日米欧で顕著に進み、イールドカーブはブルフラット化した。この間、2年債利回りについては、日銀が翌日物金利を引き下げるのではないか(あるいは誘導水準をピンポイントではなくレンジに変更するのではないか)との思惑から、日本で0.110%まで低下し、現在の誘導目標である0.1%に接近する動きに。円金利先物の中心限月である2011年6月限は99.740(金利ベース0.260%)まで買い進まれた。米国の2年債利回りは、超低金利政策からの「出口」が明らかに遠のいていることから一時0.45%まで低下し、過去最低水準を更新した。だが、ウェーバー独連銀総裁の発言から年末までの無制限資金供給オペ継続の可能性が強まっても、欧州中央銀行(ECB)による追加緩和観測までは出てこないため、ドイツの2年債利回りは0.6%台でもみ合いを続けた。

 一方、結果としてあまり動かなかったのが、ドル/円相場である。米8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数が▲7.7となって市場予想比で大きく下振れた8月19日に84.89円をつける場面はあったものの、基本的には85円台での一進一退の展開。これには日銀の追加緩和を含む日本の政策当局による円高対策への警戒感が寄与していたという見方が一般的である。だが、円売り介入の実施についてはハードルが非常に高いとみられている。また、グローバルなリスク回避志向の強まり、米景気下振れリスク増大、9月以降の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加緩和観測が原動力になっている今回のドル安円高の流れが、日本政府や日銀の政策対応だけで決定的に反転すると考えるのも合理的ではない。

 この間、ユーロ/ドル相場は、ユーロ安ドル高に動いた。米景気指標が強弱まちまちとなる中で一方向に動きづらく、1ユーロ=1.28ドル台を中心とする値動きが続いていたが、ウェーバー独連銀総裁発言をきっかけに、1.26台へとユーロが下落することになった。

 上記期間における長期金利のさらなる低下については、特に日本について、「思惑・期待・ムード先行」であった感が強い。日銀が臨時の金融政策決定会合を開催するのではないかという噂が流れた8月19日および20日の相場の上下動は、そのあたりを端的に示している。債券を売りにくいムードが引き続き支配的な中で、一段の円高ドル安進行の可能性やその場合の日銀による追加金融緩和を前提にした上で、買いが継続したという構図である。債券先物が143円台に上昇する過程では、海外ファンドとみられる先物の買いが持ち込まれたとも伝えられた。