宮崎県で10年ぶりに口蹄疫が発生した問題に対して、自衛隊が5月1日から7月27日までの間、県の災害派遣要請により派遣された。

宮崎の口蹄疫問題が語る自衛隊・災害派遣の限界

宮崎県に派遣され防疫活動を行う自衛官

 口蹄疫が収束するまでの間には、菅直人総理も自ら現場にかけつけ、県に対して派遣する自衛隊の増員を約束して帰京した。

 この時、自衛隊は大丈夫かなと感じたのは、私だけだろうか?

 そもそもこの種の災害派遣は、以下に述べる災害派遣の3要件の検討が必要である。

1. 公共性:公共の秩序を維持するため、人命・財産を社会的に保護しなければならない必要性があること。

2. 緊急性:災害の状況から、直ちに対処しなければならない状況であること。

3. 非代替性:他の機関では対処不能かもしくは能力が十分でなく自衛隊で対処する必要があること。

 特に3つ目の非代替性については、民需を圧迫する恐れがある場合が考えられ、慎重な判断が必要である。

2004年から加わった防疫事業

 2004年(平成16年)3月の京都府への鳥インフルエンザの災害派遣(防疫事業)要請に対応して自衛官を派遣して以来、この種の防疫事業(家畜伝染病に感染した家畜=患蓄に対する必要な処置=殺処分などの実施)が災害派遣の範疇に含まれるようになった。

 しかし、非代替性の観点から、自治体や農畜産業者などによる対応とのバランスを考え、省庁間協議の場を通じて、自衛隊の出動が見送られたことも実際には多かった。

 今回の口蹄疫の場合には、自衛隊に派遣が要請されたものの、宮崎県から県外に口蹄疫を拡大させないことという制約があるため、災害派遣に対応する部隊は宮崎県周辺の部隊に限定し、しかも部隊を県内に留め置いて他県などからの増援は控えなければならない状況だった。

 ここに宮崎県民や日本国民にはなかなか見えにくい問題が隠されていた。

【参考】宮崎県口蹄疫関連の災害派遣人員・車両等(延数):陸自1万6791人、車両3797両