本記事は10月20日付フィスコ企業調査レポート(ティー・ワイ・オー)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 柴田 郁夫
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事業再編が奏功し更なる成長を追求するフェーズへ
ティー・ワイ・オー<4358>は、TV-CMの企画・制作を主力としており、大手CM制作会社の一角を占めている。また、ブランディングやWebを中心としたデジタル広告、スマートフォンアプリなどあらゆる広告コンテンツの企画・制作も手掛けている。好調な受注環境が続くなか、消費者の印象に残る数々のCM制作を手掛けてきたクリエイティブ力と幅広い広告の制作に対応するワンストップソリューションを武器として業績を順調に拡大している。過去にはエンタテインメントビジネスへの事業領域拡充が景気後退の影響と重なったことにより業績低迷を招いたものの、不採算部門の整理と本業回帰による事業再編が奏功して、財務基盤の強化と収益性の向上に一定の成果が現われ、更なる成長を追求するフェーズに入ったとみられる。
2014年7月期の業績は、売上高が前期比6.3%増の26,569百万円、営業利益が同14.7%増の1,712百万円と3期連続の増収、並びに5期連続の営業増益となった。不採算事業部門 の譲渡の影響はあったものの、大手代理店経由のTV-CM制作案件や広告主との直接取引によるクロスメディア案件が順調に拡大した。
2015年7月期の業績予想について同社は、売上高を前期比7.3%増の28,500百万円、営業利益を同8.0%増の1,850百万円と引き続き増収増益を見込んでいる。好調な広告市場を背景に大手代理店経由のTV-CM制作案件と広告主との直接取引がそれぞれ伸長する想定と見られる。また、業績予想には織り込んでいないものの、戦略的M&Aによる海外展開も本格化する計画であり、その動向によっては業績の上振れ要因となる可能性も考えられる。
同社の成長戦略の柱は、広告代理店経由モデルの継続強化に加えて、同社のワンストップソリューションが活かせる広告主直接モデルの躍進、海外事業の新規展開の3軸であり、4年後(2018年7月期)の売上高目標として500億円を目指している。国内の広告制作市場は、東京オリンピック効果等により好調に推移することが予想されているが、大手CM制作会社による寡占化の進展に伴うシェア拡大に加えて、広告主直接取引による周辺領域の取り組み、並びに海外事業の新規展開により国内の広告制作市場の伸びを上回る成長率の実現に注目したい。
Check Point
●卓越したクリエイティブ力と多様な広告の制作能力を武器に業績は順調に拡大
●本業回帰による事業再編が完了し、新たな成長フェーズへ移行中
●TV-CM制作市場は継続成長しているうえ、東京オリンピック効果や大手CM制作会社による寡占化の進展等に好機
●同社のワンストップソリューションが生かせる広告主直接モデルが成長を牽引