本記事は10月7日付フィスコ企業調査レポート(ソーバル)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 
柄澤 邦光
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コストアップ要因をこなし2Q業績は当初計画を上振れ

 ソーバル<2186>は、2014年9月30日に2015年2月期の第2四半期(2014年3月-8月期)連結決算を発表した。本社移転と人員増強というコストアップ要因があったにも関わらず、売上高・利益ともに当初計画を上回る着地となった。主力のファームウェアの開発受託が想定以上に伸びたことが主な要因となった。もともと案件が豊富にあったことに加え、本社の移転に伴い、今まで分散していた技術者が本社オフィスに集約され、より多くの受注をこなせるようになった。子会社の(株)MCTECも構造改革によって黒字化し、収益貢献できるようになった点も大きい。また、独自の教育制度によって、新卒社員のほぼ全員が入社1年以内に収益貢献できる体制が整い、新卒社員がコスト増の要因になりにくくなっている点も見逃せない。

 同社は経営の基本方針として「安定成長の継続」を掲げているが、今後もこの基本方針を持続できる可能性が高い。上記のような増収・増益要因が継続すると考えられるほか、長年のソフト開発の成果によって顧客から高い信用を得ており、最近は高い利益率も見込める付加価値の高い開発案件が持ち込まれるケースが増加しているためである。従来の主要顧客であるキヤノン<7751>以外の顧客からの受注も拡大し、特定の顧客に依存するリスクも低下傾向にある。

 あえて課題を挙げるとすれば、足元では、優秀な人材の確保であろう。景気の回復に伴い、優秀な新卒者の確保が難しい状況になりつつある。同社では、これに対応すべくインターンシップを開始した。2015年春の新卒者採用数は、前年比31名増の80名を目標としており、できる限り目標に近い採用を目指している。

 中長期的な課題としては、新規事業の育成である。これは、成長速度を加速させるための要となる。同社はM&Aによる新規事業への進出を基本戦略としており、分野としては、医療、自動車、航空・宇宙の3分野を掲げている。特に現在は医療分野でのM&Aに注力している。有利子負債ゼロに加え、18億円近い潤沢なキャッシュを持つことから、売上高で3~20億円程度の企業の買収を年に1件のペースで進めていく方針を継続する。

 なお、2015年2月期通期の業績予想は据え置いたが、本社移転による業務の効率化はまだまだ進む状況にあり、想定外のリスクや、M&Aによる固定費増などのコストアップ要因が発生しない限り、業績が予想を上振れる可能性が極めて高いと言えよう。配当性向も従来の30%から35%に上げ、利益成長に伴う増配の期待も高まるだろう。

Check Point

●高付加価値案件の増加で営業利益率は7%台の水準を維持
●特定顧客の比率は低下傾向、顧客層の拡大は着実に進展
●通期業績予想は据え置き、本社移転効果はさらに進む余地も

2015年2月期第2四半期連結決算

2Q業績は予想を上振れ、本社移転により作業効率が向上

(1)概要

 ソーバルは、ファームウェアという、電機機器の性能向上に不可欠なうえ、カスタマイズ性の高い特殊なソフトウェアの開発受託を主力業務にしている。同分野で唯一の上場企業である。また、近年は、業務系やWeb系のソフト開発にも力を入れるとともに、M&Aにも積極的に取り組み、事業領域を着々と拡大している。また、経営の基本方針として「安定成長の継続」を掲げ、着実な業績向上を実現している。2015年2月期の第2四半期(2014年3月-8月期)決算においてもこの方針どおりの結果となった。