規制と法律の枠組みのカテゴリーは、ICTによって可能になった商取引に対する国の規制制度の強さを考察し、公共部門の官僚主義と政府の検閲の影響とのバランスを鑑みた政策の質と有効性を測っている。
前者を考慮に入れた理由は、オンライン情報の共有に対する政府の介入は、オンライン環境の信頼を落とし、規制リスクを増加させるためだ。銀行部門の健全性と消費者のプライバシー保護法もこのカテゴリーで考慮されている。
規制と法律の枠組みのランキングは概して、国の全体的な発展度と一致しており、先進国が確立され、信頼され、透明性のある法的枠組みを特徴とする一方、比較的貧しい国が弱い規制メカニズムを特徴としている。
しかし、このカテゴリーは、消費者保護と紛争解決に関する明確で立証された政策の導入によって意見が変わる分野でもある。スタンフォード大学ロースクールのeコマースセンターの事務局長で、法律事務所グリーンバーグ・トローリグの弁護士でもあるイアン・バロン氏は「明確なルールを持つことは、国際的なeトレードを可能にする上で必須だ」と言う。
国は明確なルールと罰則、その執行によって最低限度の法制度を保証しなければならない。しかし、eトレードを取り巻く明確なルールを策定することは難しい。
「特定の管轄権内および管轄権をまたぐ電子商取引の規制に関する最大の問題の1つは、まったく枠組みが存在しなかったり、逆に複数の枠組みが適用され、重複することだ」。経済協力開発機構(OECD)のブリジット・アコカ氏はこう説明する。「ある特定の電子商取引にどのルールが適用されるか判断することは、政府、企業、消費者にとって一様に複雑なプロセスとなりかねない」
規制とオープンな競争のバランスを取ることも重要である。バロン氏は、特にeトレードにおいては、過度に保護的な規制は商取引の流れを開放するどころか、むしろ閉じてしまう恐れがあると警告する。ひとたびこのバランスを取ることができたら、政府は介入を控えるべきだ。
この点では、インド(11位)は規制の枠組みの質と有効性に影響を与える断片的な統治と政策執行に苦しんでいる。一方で中国(12位)は、法の支配における透明性の欠如と介入リスクによって順位が下がっている。
ドイツ――国際的な決済を専門とするニュースサービス会社ペイパーズによると、ドイツではオンラインで買い物をする人の10%が国外から買い、eコマース企業の30%が国外で製品を販売している――は、法的枠組みの質と有効性のおかげで、このカテゴリーで首位につけている。輸出主導型のドイツ経済には、信頼を抱かせる長く、確かな実績がある。