日本では65歳以上の高齢者が21%を超える「超高齢化社会」を迎え、「介護食」のニーズが高まっている。飲み込む力が弱くなった高齢者向けに、舌でもつぶせるようにしたり、飲み込みやすいように工夫した食品が出回るようになった。今後も介護食市場の拡大が見込まれている。介護食の商品開発が進み、販路も拡大してきた。国も介護食の普及に力を入れている。介護食の現状と課題について見てみたい。
超高齢社会で拡大し続ける介護食市場
65歳以上の高齢者人口は、2014年に3186万人(総人口に占める割合25.0%)で過去最高になった。「4人に1人が高齢者」という状況だ。一人暮らしの高齢者も増え続けている。65歳以上の単独世帯は2010年に29.7%になり、2030年には39%に達する見込みだ。
介護食市場は拡大が見込まれている。富士経済が2013年7月に発表した国内市場調査によると、2012年の介護食市場は1020億円。2020年には1286億円と、2012年比で26%の増加を予測している。施設用の伸びが鈍化する一方で、在宅用の伸びが見込まれているという。
なお、調査対象となったのは、流動食、やわらか食、栄養補給食、水分補給食、とろみ調整食品。「やわらか食」は、噛んだり飲み込んだりする力が弱い人向けのキザミ食やミキサー食、ソフト食、ムース食などを指す。ソフト食とムース食は、見た目や味を普通の食事と似た形に加工して、噛んだり飲み込みやすくしたものだ。
在宅介護の高齢者の6割が低栄養
そもそも、なぜこのような「介護食」が必要なのだろうか。
厚生労働省の調査によると、在宅介護を受ける高齢者の6割が低栄養傾向にあるという。