2020年東京オリンピックに向けた民間企業、各種団体の取り組みや計画策定が各方面で進められている。その中で、会場、空港などのハコモノ、社会インフラの建設がもたらす経済効果だけでなく、ICT分野での効果、パイロットプロジェクト等を模索する動きも本格化してきた。

反面教師となる長野オリンピック

 東京オリンピックでは、いわゆるハコモノや交通機関等のインフラ投資だけでなく、訪日観光客の増加や個人消費の活性化などにも効果を追求すべし、という声が多い。しかし企業、行政サイドからすると、どうしても効果が見えやすいハコモノ、インフラなどの検討が先行する形となっている。

 前回、1964年の東京五輪は高度成長期の真っただ中に開催され、ハコモノ、新幹線の開業など交通機関の新設はまさに時宜を得たものであった。しかし、それから50年が経過し、日本の状況はまったく異なっている。社会の成熟やインフラの老朽化、悪化する財政状態を考慮すると、むしろ参考にすべきは1998年長野オリンピックだ、という見方にも説得力がある(この場合の「参考」は「反面教師」という意味合いが強い)。

 長野オリンピックでの日本選手の検討は大いに評価したい。しかし、ジャンプ台を建設した白馬村は110億円超の借金を抱えることになった(1世帯あたり500万円以上の借金)。また、長野市では1997年の市債残高が約1900億円に膨らんだ(1世帯あたり150万円超の負担)。その後の地域経済の負担は、経済効果を加味しても決して小さいものではなかった。

 東京オリンピックでは、いわゆるハコモノ、交通機関だけではなく、観光客や個人消費等の生活シーンに密着した取り組みに目を配ることが必要であろう。その観点から、ICTにはまさにインフラと生活シーンをつなぐ役割が期待されることになる。

新技術か、従来技術の延長か?

 東京オリンピックは日本の技術力、商品力を世界にアピールする場でもある。だが携帯電話のいわゆるガラパゴス問題のように、日本のICTには世界市場で存在感を示せていないという問題がある。2020年に向けたICT分野での取り組みはその課題をどうクリアするかが問われることになる。