■ 先週の中国株式市場
―ハンセン指数、冴えない経済指標を背景に大幅下落―
<先週の概況>
先週の中国株式市場はまちまちでした。ハンセン指数は前週比2.55%下落で、心理的な節目の2万5,000を割り込みました。一方、上海総合指数は小幅ながら上昇し、週間ベースで約0.24%高の2,331.95ポイントで引けました。ハンセン指数は、先週前半に中秋節を控えていたことや、後半に発表された冴えない経済指標を受けて調整しました。今週はスコットランドの独立に関する住民投票や米国のFOMC決定に注目されています。
■ 中国株式市場バリュエーション
■ 業種別リターン
■ 香港ハンセン指数採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
香港ハンセン指数構成銘柄のうち、2銘柄は上昇、48銘柄は下落しました。恒基兆業地産(ヘンダーソン・ランド・デベロップメント)は1.73%上昇しました。また、国泰航空(キャセイパシフィック・エアウェイズ)も堅調に推移しました。<下落>
一方、中国石油天然気(ペトロチャイナ)、中国海洋石油(CNOOC)等の石油関連株が下落し、2銘柄でハンセン指数を約120ポイント超押し下げました。また、中国複合企業の中国中信(旧中信泰富、CITICパシフィック)が「損失発生隠避」の疑いで5%近く下落しました。オンラインゲーム会社IGGも軟調に推移しました。テンセンと連携している携帯ゲーム「Castle Clash」の収益が予想に届かなかったことが売り材料視されました。■ 先週発表された主な経済指標
9月8日 中国貿易収支 8月 +498.4億ドル 市場予想 +400 億ドル、前回 +473億ドル
輸出(前年比) 8月 +9.4% 市場予想 +9.0%、前回 +14.5%
輸入(前年比) 8月 -2.4% 市場予想 +3.0%、前回 -1.6%
輸出については、グラフ「中国輸出金額の推移 地域別 (2010年〜)」を見ると、8月の各地域向けの輸出の伸び率はまちまちでした。2010年年初を100とすれば、特にアジア向け(7月の199.8→8月の209.5)及びアメリカ向け(7月の154.8→8月の156.9)の輸出の伸びが目立ちました。一方で、欧州向け(7月の126.5→8月の122.9)と日本向け(7月の134.7→8月の124.7)の輸出の伸び率は減少に転じたことも明らかになりました。
輸入では、輸入数量が増加し、輸入価格が低下する傾向が続いてきました。税関のデータを見ると、前8か月の鉄鉱石の輸入数量は16.9%増加した一方、平均価格は16%低下しました。また、銅の輸入数量は14.3%増加しましたが、平均価格は7.1%下落しました。
9月11日 生産者物価(PPI、前年比) 8月 -1.2% 市場予想 -1.1%、前回 -0.9%
8月の中国生産者物価指数(PPI)の前年比は前月の-0.9%から-1.2%に下げ幅が拡大し、市場予想の-1.1%より悪化しました。トレンドを見ると、2012年から緩やかに改善している傾向はまだ変わっていないと考えられますが、生産者物価のデフレーションは暫く続きそうです。業種別の生産者物価の前月比を見ると、非鉄金属製錬が4か月連続で上昇し、が0.4%の上昇となったことが目立ちました。一方、石油・ガス採掘価格や鉄系金属材料などの価格が下落しました。
9月11日 消費者物価指数(CPI、前年比) 8月 +2.0% 市場予想 +2.2%、前回 +2.3%
8月の消費者物価指数(CPI)の前年比は 2.0%増と、7 月から伸びが鈍化しました。ベースとなる前年の数値が比較的高かったことに加え、食料除くCPIと食料CPIの物価(前年比)が軒並み下落したことが、CPI全体が伸び悩んだ原因だと考えられます。食料CPIについて、前年比を見ると、果物(21.2%増)と卵(18.7%増)の上昇が目立った一方、野菜(6.9%減)の下落が大きくなりました。食料除くCPIについては、不動産相場の下落が建材価格などの上昇を抑えていることわかりました。9月12日 マネーサプライM2(前年比) 8月 +12.8% 市場予想 +13.5%、前回 +13.5%
8月のマネーサプライM2の前年同期比は12.8%増と、13.5%増の市場予想を大きく下回りました。また、8月の新規人民元建て融資は7025億元と、ほぼ予想と一致しました。総資金調達額(中国元)は9574億元増と、11350億元増の市場予想を下回ったものの、7月から大幅に増加しました。前月を合わせて見ると、クレジットの供給は減速傾向が出てきたようです。9月13日 固定資産投資(前年比) 8月 +16.5% 市場予想 +16.9%、前回 +17.0%
8月の固定資産投資額は前年同期比16.5%増と、市場予想に届かず、前回の17.0%増から低下しました。内訳をみると、年初からの傾向が続いており、鉄道投資や建設投資が堅調だったものの、不動産開発投資は著しく減速しました。9月13日 小売売上高(前年比) 8月 +11.9% 市場予想 +12.1%、前回 +12.2%
8月の小売売上高(前年比)は市場予想を小幅に下回る11.9%増となりました。通信機器の売上高が31.8%増を記録した一方、一定規模以上の飲食収入の前年比は0.9%減少しました。汚職調査の影響がまだ残っています。9月13日 鉱工業生産(前年比) 8月 +6.9% 市場予想 +8.8%、前回 +9.0%
8月の鉱工業生産は6.9%増と、7月の9.0%増から低下し、市場予想を下回りました。8月の鉱工業生産の伸び率は2008年のリーマンショック以来最低の水準となりました。特に電気、熱、ガス、水の生産と供給産業の0.6%減少が目立ちました。■ 今後発表される主な経済指標
特に重要な経済指標の発表はありません。
■ マーケットビュー
―香港市場は短期的な売られすぎサインあり、小幅に反発か―先週前半に中秋節を控えていたことに加え、先週発表されたCPI、PPI、M2等の経済指標が軒並み予想に届かなかったことから、香港ハンセン指数は売りが優勢となり、週間で640ポイント超下落しました。また、先週土曜日に発表された冴えない鉱工業生産や固定資産投資などの経済指標を受けて、今週の月曜日にハンセン指数は売りが売りを呼ぶ動きが見られ、さらに1%近く下落し、50日の移動平均線を割り込んだ24,356.99ポイントとなっています。
天津での夏季ダボス会議で演説した李克強首相によると、今後の経済運営について「強い刺激策に頼らず、改革の推進を経済成長のけん引力とする」と述べ、大型の景気対策を採らない方針を示しました。また、年間7%半ばの「中高速成長」の下で国有企業や金融部門の改革などを加速する方針を強調し、「中国経済のハードランディングはあり得ない」と力説しました。これらの政策スタンスは投資家の楽観姿勢を呼ぶ可能性もありそうです。また、テクニカル面では、香港ハンセン指数の60日の移動平均線(24,233ポイント)及び心理的な節目の24,000ポイントが相場の支えとなりそうです。さらに、ボリンジャーバンドのチャートを見ると、ハンセン指数は7日連続で下落して下のバンド(-2σ)に近づいてきたので、売られすぎの兆しが出てきました。
今週のハンセン指数は売り一巡後反発する可能性がありそうです。ただ、今週16―17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策決定を控えていることや、18日にスコットランドが住民投票で英国から独立する懸念もあることから、積極的な買いが出にくく、上昇幅は限定的だと思われます。また、19日に予定されているアリババ(BABA)の米国での上場(IPO)にも非常に注目が集まっており、香港株にとっては、短期的な投機資金の流出が避けられそうにありません。
フィナンシャル・インテリジェンス部 林 宇川(Tony Lin)
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