■ 先週の中国株式市場
―香港株 小幅ながら反発 中国利下げと「深港通」の観測を好感―
<先週の概況>
先週の中国株式市場は上昇しました。ハンセン指数は約0.9%上昇し、2万7,822ポイントで終了しています。また、上海総合指数は2.4%の上げとなり、4,308ポイントと先々週から反発しました。先週のハンセン指数は、中国の利下げで買い先行となったものの、欧米金利の上昇や中国4月の経済指標の悪化などが相場の重荷となり、上昇一服となりました。ただ、週後半にはテンセントの好決算や、「深港通」という深センと香港の株式市場の相互乗り入れへの期待から、大きく買い戻されて25日移動平均線を上回りました。
■ 中国株式市場バリュエーション
■ 業種別リターン
■ 香港ハンセン指数採用銘柄 週間騰落率ランキング
<上昇>
中国インターネット大手の騰訊HD(テンセント)は2015年1-3月期決算で純利益が過去最高を更新したことが好感され、週間で5%を超える上げとなっています。また、合弁・再編計画の実施を控え、19日に売買を停止する予定の香港不動産開発の長江実業(集団)(チョンコン・ホールディングス)と複合企業の和記黄埔(ハチソンワンポア)がともに3%超上昇しました。<下落>
増資を発表した中国不動産の華潤置地(チャイナ・リソーシズ・ランド)は週間で6%余り値下がりしました。また、カジノの金沙中国(サンズ・チャイナ)と銀河娯楽集団(ギャラクシー・エンターテインメント)のマカオカジノ2銘柄もともに下落しました。■ 先週発表された主な経済指標
5月13日 固定資産投資(前年比) 4月 +12.0% 市場予想 +13.5%、前回 +13.5%
4月の固定資産投資額は前年同期比12.0%増と、市場予想の13.5%増から伸びが低下しました。内訳をみると、4月の不動産投資が著しく減ったほか、建設業投資も前年比大幅に低下していたのは目立ちました。一方で、製造業投資がほぼ前月から横ばいとなり、鉄道建設投資は前月から大きく伸びています。5月13日 鉱工業生産(前年比) 4月 +5.9% 市場予想 +6.0%、前回 +5.6%
4月の鉱工業生産は前年比5.9%増と、前回の5.6%増より小幅な改善がみられたものの、市場予想の6.0%増を下回りました。これは中国国内の生産需給の弱含み傾向を示しています。5月13日 マネーサプライM2(前年比) 4月 +10.1% 市場予想 +11.9%、前回 +11.6%
4月のマネーサプライM2は前年比10.1%増と、11.9%増の市場予想を下回りました。また、4月の新規人民元建て融資は7,079億元と、9,030億元の市場予想を大きく下回りました。さらに、総資金調達額(中国元)は10,500億元増と、市場予想を下回りました。中国人民銀行の相次ぐ追加緩和にもかかわらず、4月のマネーサプライM2の伸び率とクレジットの供給ともに低下している傾向からは資金の流出や実体経済の弱さが窺えます。■ 今後発表される主な経済指標
5月21日 HSBC中国製造業PMI 5月 市場予想 49.4 前月 48.9
5月のHSBC中国製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が日本時間21日に発表される予定です。5月のHSBC中国製造業PMIは49.4が予想されています。■ マーケットビュー
―ハンセン指数、 失望売りが先行か HSBC中国製造業PMIに注目―
ただ、先週末の引け後に「深港通」が期待に反して発表されなかったことを受けて、今週のハンセン指数は失望売りで先週末に回復した25日移動平均線を下回り反落のスタートとなりそうです。また、19日から21日まで計20社の新規上場(IPO)が予定されており、需給悪化も相場の重石となる可能性があります。
一方で先週の周・銀監会副主席の「これから国内銀行の預貸率規制が緩和される(概算で約7兆元の信託資金のリリース)」との発言が相場の支援材料になると考えられます。加えて、相次いだ経済指標の悪化による中国の一段の追加緩和や、「深港通」への期待が引き続きハンセン指数の支えとなりそうです。このため下値は限定的とみられ、5月の安値を大きく割り込むような展開にはならないと予想されます。
なお、今週は21日にHSBC中国製造業PMIの発表が行われ、注目されます。
フィナンシャル・インテリジェンス部 林 宇川(Tony Lin)
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